ルーブル美術館は「限界」に達している──新館長がフランス上院で危機感示す
ルーブル美術館の新館長クリストフ・ルリボーが、フランス上院で同館の老朽化や資金不足を訴えた。2025年10月の窃盗事件を機に、セキュリティ体制や施設の不備が注目されるなか、世界最多の来館者数を誇る美術館は大規模改修に向けた資金調達を急いでいる。
2月にルーブル美術館の館長に就任したクリストフ・ルリボーは、6月17日にフランス上院で演説を行い、世界最多の来館者数を誇る同館が「限界に達している」と訴えた。上院の文化・教育・コミュニケーション・スポーツ委員会で、ルリボーはルーブルが「岐路に立たされている」と述べ、こう続けた。
「設備の修繕という喫緊の課題が山積みになっていると同時に、莫大な資金不足にも直面しています。率直に申し上げると、壮麗な佇まいを誇るこの美術館は、職員の日々の努力にもかかわらず、今は余力でどうにか動いている状態です。施設やインフラ設備は寿命を迎えようとしているのです」
ルーブル美術館のインフラ設備の老朽化や時代遅れのセキュリティ体制は、2025年10月に発生した窃盗事件を機に注目されるようになった。この事件では、窃盗団が高所作業車を使って上階の窓を破って侵入し、「アポロン・ギャラリー」からわずか8分で1億200万ドル(現在の為替レートで約163億円)相当の王冠や宝石類を奪い、侵入時と同じ経路で逃走した。犯人の逮捕は進んでいるものの、盗まれた宝飾品は依然として回収されていない。
事件後、ルーブルでは昨年12月から今年1月にかけて、部分閉鎖や開館の遅れが相次ぎに、職員によるストライキも行われた。職員たちは、過労や人員不足といった労働環境の改善に加え、設備投資の必要性を訴えていた。さらに今年2月には、ツアーガイドによるチケットの不正利用も発覚し、初の女性館長としてルーブルを率いてきたローランス・デカールは辞任に追い込まれた。その翌日、当時ヴェルサイユ宮殿・美術館・庭園の総裁を務めていたルリボーが後任に指名された。
ルリボーはこうした批判を念頭に、「対処すべき問題に正面から取り組んでいる」と強調した。さらに、2027年1月から美術館周辺に新たなビデオ監視システムを導入すると明らかにし、「安全確保の観点から優先度が高いにもかかわらず、対策が不十分だった場所には、すでに追加の監視カメラを設置しています」と付け加えた。
現在ルーブルは、10億ユーロ(約1846億円)以上かかるとされる大改修計画「ルーブル・ヌーヴェル・ルネサンス計画」の資金調達を急いでいる。2025年初頭に発表された同計画には、新エントランスの建設、およそ3060平方メートルに及ぶ《モナ・リザ》(1503〜1519年ごろ)専用展示室の設置、セキュリティシステムの改善などが含まれる。2026年5月には、ニューヨークのセルドルフ・アーキテクツと、パリのステュディオス・アーキテクチャーが改修を統括することが発表された。
フランスのル・モンド紙によると、ルリボーは上院委員会で、ルーブルが「今後数カ月のうちに」3億6000万ユーロ(約665億円)を調達する必要があると述べた。また、2017年に開館したルーブル・アブダビに「ルーブル」の名称使用を認めた契約によって、3億ユーロ(約554億円)の収入が見込まれていることを明かし、「改修資金を確保しなければならないという、強烈なプレッシャーを感じている」と語った。
「長蛇の列や劣悪な音響設備、不十分なエントランスホールの空調設備は、職員だけでなく来館者にとっても不快な環境を作り出しています。世界で最も訪問者の多い美術館でありながら、見学前の受け入れ体制が万全とは言えません。これによってルーブルの評判に悪影響が及んでいるのです」
ルリボーが指摘した通り、中国系アメリカ人建築家I.M.ペイが設計したガラスピラミッドを経由する現在のエントランスは、年間400万人の来館者を想定して設計された。しかし現在、ルーブルには毎年900万人以上が訪れている。ルリボーは上院での演説を、次の言葉で結んだ。
「こうした状況はルーブルの未来を危うくするものです。しかし、当館のコレクションがもつ魅力を考えれば、この美術館を生まれ変わらせ、修復していくことは絶対に可能なはずです」
(翻訳:編集部)
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