公式ガイドにも掲載の「古代ローマの円形闘技場」は偽物だった──“遺跡”建設者に実刑

イタリア北部で、古代ローマの遺跡として観光客を集めていた劇場が、現代の資材でつくられた偽物だったことが判明。仕掛け人の男には懲役2年4カ月の実刑判決が下された。

「古代ローマの円形闘技場」として宣伝されてきた建造物。Photo: X/@gazetory

丘陵地に突如現れた大規模な「遺跡」

イタリア北部ヴィチェンツァ県で「古代ローマの円形闘技場」として宣伝されてきた建造物が、現代の資材を使って建てられた偽物だったことが明らかになった。エル・パイスが報じた。

建造物をつくったのは、現在69歳のイタリア人男性、フランコ・マロッソ。彼はアルクニャーノ市の丘陵地にある約5000平方メートルの敷地に、古びたように加工した石材を積み上げ、構造物を築いた。柱はセメント、彫像は石膏でつくられ、客席下には人工池まで設けられていた。

この建造物は「アンフィテアトロ・ベリコ(ベリコ円形闘技場)」と呼ばれていたが、半円形のローマ劇場を模した構造となっている。

マロッソは当初、この場所を古代ギリシャや古代ローマ、さらには新石器時代の遺構を含む本物の考古遺跡として紹介していた。2005年の地滑り後に発見したと説明し、紀元393年にまでさかのぼる「世界最古かつ最大級の円形闘技場」のひとつだと来訪者に語っていたという。

「古代ローマの円形闘技場」として宣伝されてきた建造物。Photo: X/@gazetory

さらに、ユリウス・カエサルがクレオパトラを伴い、エジプトからローマへ帰還する途中にこの場所を訪れたほか、シェイクスピアの戯曲『ロミオとジュリエット』のヒロイン、ジュリエット・キャピュレットが敷地内の古い教会で暮らしていたとも主張していた。

地元当局もこうした説明を受け入れ、施設はEUの資金で制作されたヴィチェンツァの観光ガイドや公式アプリにも掲載された。入場料は1人あたり最大40ユーロ(約7430円)で、敷地内ではガイド付きツアーや歴史衣装を着たパフォーマンス、食事会などが行われていた。

偽装が発覚、10年の法廷闘争へ

しかし、2016年にアルクニャーノ市が告発したことで偽装が発覚。捜査の結果、敷地内に考古学的遺構は存在せず、施設全体が現代の資材で建てられていたことが判明した。さらに、必要な都市計画上の許可や景観保護に関する認可を得ずに建設されていたことも明らかになり、現場は封鎖された。

捜査が始まると、マロッソは従来の説明を変更。丘の下にかつて存在した古代の円形闘技場を復元したものだと主張した。しかし、文化財保護当局は、現地に考古学的遺構はなく、全ての構造物が現代につくられたものだと認定し、この主張を退けた。

一方、マロッソの弁護側は建造物が「粗雑で素人じみた」出来であるため、本物の考古遺跡だと人々に信じ込ませることは不可能だったと主張。したがって意図的な偽装には当たらないと訴えたが、認められなかった。以後、弁護側による上訴が重ねられ、司法手続きは約10年に及んだ。

パドヴァ大学文化遺産学科の古典考古学教授で考古学者のヤコポ・ボネットは、エル・パイスの取材に対し、専門家は古代の建造物と現代の建造物を確実に見分けることができると指摘する。判別には外観だけでなく、建築上の特徴や素材、工法、保存状態、長年にわたる摩耗などが手がかりになるという。

また、忠実な復元には莫大な費用がかかるとして、「今日、円形闘技場を忠実に復元しようとすれば、個人にはまず負担できないほどの費用が必要になる」と説明した。そしてボネットは、立地そのものの不自然な点についても次のように指摘した。

「古代の建築物は、特定の場所にしか建てられませんでした。円形闘技場は、99パーセントのケースでローマ都市の外縁部に築かれています。古代の都市中心部から遠く離れた田園地帯にある円形闘技場は、当然ながら偽物です」

マロッソには、違法建築と美術品偽造の罪で懲役2年4カ月の実刑判決が確定し、数カ月前に刑務所へ収監された。あわせて3000ユーロ(約56万円)の罰金も科された。

判決では、違法に建てられた劇場などの撤去と丘陵地を元の状態に戻すことを命じられたが、いずれもまだ実行されていない。アルクニャーノ市は被った損害の回収に向け、マロッソに56万ユーロ(約1億400万円)の損害賠償を求めている。

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