開館目前、ルーカス・ミュージアムを施工業者が提訴。「私立ではなく公共事業」
10億ドル(約1540億円)超を投じて建設されたルーカス・ミュージアム・オブ・ナラティブ・アートを、施工業者が提訴した。年間30ドル(約4600円)という土地の賃貸契約などを根拠に、同館は「公共事業」であると原告側は主張している。
映画監督のジョージ・ルーカスと妻のメロディ・ホブソンが創設したルーカス・ミュージアム・オブ・ナラティブ・アートが、10億ドル(約1540億円)の巨額な資金と10年以上に及ぶ行政手続きを経て、メディア向けにお披露目された。しかし現在、建設にあたって公共事業として必要な法的手続きを踏んでいなかったとして、同館を相手取った訴訟が起こされている。
ロサンゼルス・タイムズ紙が9月9日に報じたところによれば、同館は現在、施工業者から4件の訴訟を起こされている。このうちJ.E.スナイダー・エレクトリックは、シーメンス・インダストリーの下請けとして工事に携わった電気工事会社で、未払いとなっている工事代金をめぐって訴えを起こした。同社はそのなかで、この美術館が本当に「私立」と言えるのかという問題も提起している。なお、US版ARTnewsは訴状の全文を入手できていない。
提出された訴状によれば、同館はカリフォルニア州の公共契約法や民法、労働法に基づく行政手続きや登記、保証金に関する義務を免れるため、意図的に「私有の非営利開発」と位置付けられていたという。これに対し原告側は、実態としては公共事業に当たると主張し、次のように述べている。
「事実上も法律上も、本プロジェクトは常に『公共事業』だと言える。なぜなら、適正な市場価格を下回る公有財産の譲渡や、名目的または市場価格以下の賃料による公有地の貸与を含め、建設費用の一部が公金で賄われているからだ」
原告側がその根拠の一つとして挙げているのが、カリフォルニア州と同館との土地賃貸借契約だ。シカゴやサンフランシスコでの建設構想が頓挫したのち、ルーカス・ミュージアムは2017年、ロサンゼルスのエクスポジション・パーク内にある州立カリフォルニア・サイエンス・センターとの間で、99年間にわたり年間30ドル(約4600円)で敷地を借りる契約を結んだ。原告側は、こうした格安の賃貸契約が、このプロジェクトを公共事業とみなす根拠になると訴えている。J.E.スナイダー・エレクトリックの代理人はロサンゼルス・タイムズ紙に対し、「賃料の優遇措置こそが、本プロジェクトを公共事業たらしめていると主張しています」と語った。
これに対し、ルーカス・ミュージアム側の代理人弁護士は原告側の主張を否定し、ロサンゼルス・タイムズ紙を通じて次のような声明を発表した。
「ルーカス・ミュージアムはアメリカ史上最大級の私的文化寄付であり、10億ドルを超える資金のすべてが純粋な私財です。公金も、公的融資も、公的負債も一切使用していません。これを『公共事業』と呼ぶ主張はフィクションであり、当館と直接の契約関係にない下請け業者が、日常的な支払いトラブルにおいて交渉の糸口を掴むためにでっち上げたものに過ぎません」
同館の弁護士によれば、カリフォルニア州に対しては一貫して私立美術館として建設することを明示する一方、地域への貢献策も講じてきたという。工事によって利用できなくなる平面駐車場を補うための210万ドル(約3億2260万円)の支払いのほか、近隣のサッカー場の改修、公園スペースの管理・維持などが含まれている。
実際、J.E.スナイダー・エレクトリックは今回の訴訟で、ルーカス・ミュージアムの建設工事に対する代金をシーメンス社から受け取っていないとも主張している。シーメンスの広報担当者にコメントを求めたが、回答は得られなかった。
ルーカス・ミュージアムは「ナラティブ・アート」を展示のテーマに掲げ、創設者たちはこれを「物語を語るあらゆる形式のアート」と定義している。展示内容は、フリーダ・カーロの自画像からポケットモンスターのイラスト、ラスコーの洞窟壁画の再現、ルーカス自身が手がけた映画『スター・ウォーズ』シリーズのキャラクター彫刻まで多岐にわたる。
巨額の建設費や展示方針をめぐっては、開館以前からさまざまな評価が寄せられてきた。映画業界から賛辞が相次ぐ一方、美術界からは厳しい批判も出ている。US版ARTnewsのレビュー記事では、10億ドルという費用そのものに着目し、こう評している。
「振り返ってみれば、10億ドルという費用こそが、ルーカス・ミュージアムが究極的には自己顕示的なプロジェクトであることを示す、最も明確な兆候だったのかもしれない」
(翻訳:編集部)
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