TENNOZ ART WEEK 2026開幕──アートフェアからオープン・スタジオまで、見どころを徹底紹介

東京・天王洲を舞台に、街のアート施設を巡る「TENNOZ ART WEEK 2026」が開幕した。ギャラリーによるアートフェアや初のオープンスタジオなど、初心者からコレクターまで楽しめる各会場の見どころをレポートする。

「u.n.l.o.c.k. tube++」展示風景。

東京・天王洲を舞台とする回遊型アートイベント「TENNOZ ART WEEK 2026(以下、TAW)」が開催中だ。会期は9月13日まで。

同イベントは、寺田倉庫がオフィシャルパートナーを務める国際アートフェアTokyo Gendai」(9月11日〜13日、パシフィコ横浜)と連携して開催されており、9月12日と13日には、Tokyo Gendaiの会場であるパシフィコ横浜と天王洲を結ぶ無料シャトルバスも運行する(対象はTokyo Gendaiの入場チケット所持者。運行時間などの詳細は公式サイトから)。

1950年に設立された寺田倉庫は、天王洲を拠点に、基幹事業である倉庫業に加え、2000年代以降、さまざまなアート施設を相次いで開設してきた。現在、天王洲には、同社が運営するギャラリー複合施設「TERRADA ART COMPLEX」やミュージアム「WHAT MUSEUM」、若手アーティストの作品を展示・販売する「WHAT CAFE」など、多彩なアート施設が徒歩圏内に集積している。TAWでは、これらの施設を横断的に活用し、アートの多様な魅力を来場者に伝える。

アートの初心者にも開かれているフェア

寺田倉庫取締役専務執行役員の秋元雅宏は、プレスツアーの挨拶でTokyo Gendaiとの縁に言及。同フェアを運営するアート・アセンブリーから「Tokyo Gendaiを天王洲で開催できないか」と打診されたことが始まりだったと明かし、東京でもアートを楽しんでもらう機会をつくろうと、2023年にTAWを初開催した経緯を振り返った。

TAWの大きな特徴は、普段アートに触れる機会の多くない人や、アートを買うことに関心を持ちはじめた人にも開かれている点だ。「TERRADA ART STUDIO TENNOZ オープンスタジオ 2026」では、アーティストの制作現場を訪ね、本人から作品や制作について直接話を聞くことができる。また、WHAT CAFEで開催中の「u.n.l.o.c.k. tube++」には37人の若手アーティストによる250点超の作品が並び、作品によっては1万円台から購入できる。

以下、各会場の見どころを紹介していこう。

「Tennoz Contemporary」

MAKI展示風景。
TEZUKAYAMA GALLERY展示風景。
小山登美夫ギャラリー展示風景。
Marco Gallery、大竹舞人による展示風景。

日本を代表する現代アートギャラリーが2棟にわたって入居する「TERRADA ART COMPLEX」では、38軒のギャラリーやスペースが参加する、TAWの中心企画「Tennoz Contemporary」が開催されている。同企画が正式にアートフェアの形式を採用するのは、今回が初めてだ。

TERRADA ART COMPLEX Ⅰでは、入居ギャラリーと国内外のゲストギャラリーによるコラボレーション展示を展開。TERRADA ART COMPLEX Ⅱでは、入居ギャラリーがTAWに会期を合わせて一斉に作品を紹介する。展示は各ギャラリーの内部にとどまらず、建物の共用部にも広がっている。

この企画は、入居するギャラリストたちの話し合いから生まれた。外部からの参加者には、Tokyo Gendaiから移動してくる観客の存在も考慮し、同フェアに出展していない画廊や、大阪など東京以外の都市を拠点とするギャラリーを中心に選んだという。

TERRADA ART COMPLEX Ⅰでは、MAKIがTEZUKAYAMA GALLERY(大阪)、KOKI ARTS(東京)、LEESAYA(東京)、Marco Gallery(大阪)と共同で展示を行っている。

MAKIは、カナダ出身の画家キーラン・ブレナン・ヒントン(Keiran Brennan Hinton)による親密な室内画を紹介。TEZUKAYAMA GALLERYは加藤智大、長谷川学、タムラサトルの立体作品、KOKI ARTSはマーサ・タトル、真島明子、松本奈央子の平面作品を出品した。Marco Galleryでは、布や繊維を立体的に編み上げた彫刻で知られる大竹舞人の作品を見ることができる。それぞれの部屋に各ギャラリーの個性が表れ、密度の高い鑑賞体験を生み出していた。大竹は、TERRADA ART COMPLEX Ⅱの2階共用部にも、廃材を手作業で編み上げた巨大な立体作品群を展示している。こちらも見逃せない。

平面作品を中心に構成しているのが、小山登美夫ギャラリー、KAYOKOYUKI(東京)、AWASE Gallery(東京)、バンビナートギャラリー(東京)による共同展示だ。4軒のギャラリーが同じ空間の壁面を分け合い、それぞれの所属作家を紹介している。小山登美夫ギャラリーは、1990年代から環境問題や人間の欲望といったテーマを、愛らしい生き物のモチーフに託して表現した桑原正彦(1959-2021)の作品を展示。KAYOKOYUKIは、動物などを描いた支持体にコットンやシープスキンを組み合わせた大田黒衣美の作品を出品している。

Tennoz Contemporaryの中心人物の一人である小山登美夫は、複数のギャラリーと共同で展示したことについて、「気の合うギャラリー同士なので、展示に苦労はなかった。ほかの展示を見ても、拠点が同じ、得意とするジャンルが近いなど、グループごとに個性が生まれているのが面白い」と語った。

TERRADA ART COMPLEX ⅠのSCAI PARKの展示も印象深い。普段は扉が閉ざされ、ガラス越しに作品を見るスペースだが、今回は内部に入って鑑賞できる。とりわけ目を引くのが、三輪美津子の大作油彩画だ。ダイナミックな筆致からは、制作スタイルを大胆に変化させながら独自性を築いてきた三輪の、創作に対する情熱が伝わってくる。

Goyo Gallery 杉山日向子個展「風兆」展示風景。
森田学によるライブペインティング。
MASUMI SASAKI GALLERY展示風景。
KOTARO NUKAGA ライゾマティクス「After Understanding」展展示風景。
YUKIKOMIZUTANI 外山寛子個展「祝福の物語」展示風景。

TERRADA ART COMPLEX Ⅱでも、それぞれのギャラリーの個性を生かした見応えのある展示が展開されている。Goyo Galleryでは、1997年生まれの画家・杉山日向子の個展を開催。共用部では、アーティストの森田学がDJプレイに合わせてライブペインティングを行い、フロアを盛り上げていた。

4階にある「BONDED GALLERY」は、保税蔵置場としての機能を備えた寺田倉庫運営の展示スペースだ。今回は東京・国立のMASUMI SASAKI GALLERYによるグループ展の会場となっている。オフロードバイクをはじめとする身近な品々を組み合わせたCALMA BY RYO OKAMOTOのダイナミックな立体作品から、幻獣を淡い色彩で描く宮川慶子の平面作品まで、多彩な表現が並ぶ。ギャラリーの意欲が伝わる展示だった。

通常、TERRADA ART COMPLEXの展覧会スケジュールは各ギャラリーに委ねられており、全てのギャラリーが同時に開廊する機会はほとんどない。その意味でも、各スペースをまとめて巡ることのできるTennoz Contemporaryは貴重な機会となる。

Tennoz Contemporary
会期:~ 9月13日(日)
会場:TERRADA ART COMPLEX Ⅰ・Ⅱ(東京都品川区東品川1-33-10・8)
時間:ギャラリーにより異なる
料金:無料

「TERRADA ART STUDIO TENNOZ オープンスタジオ 2026」

西村茉麻とスタジオ。
西村茉麻スタジオ。
Nasim G. Pachiスタジオ。
徳田祐司スタジオ。
GOU SHIBATAスタジオ。

TERRADA ART COMPLEX Ⅰの2階にある、通常非公開の制作スタジオ「TERRADA ART STUDIO 天王洲」では、初のオープンスタジオが開催されている。同スタジオは2015年に運用を開始した。物流倉庫だった空間を改修した高い天井と、大型作品も搬出入できる大きなエレベーターが特徴で、17室あるスタジオは現在満室。今回は、そのうち8室が公開されている。

スタジオ内には画材や制作道具が普段に近い状態で置かれ、壁や床には完成作品が展示されている。一部は購入も可能だ。床や壁に付着した絵の具と作品の色彩が呼応する様子からは、作品がまさにこの場所で生み出されたことが実感できる。

入居して8年になるという西村茉麻は、自身の奥底に潜む思考や矛盾、葛藤といった目に見えない内面世界を、平面作品として表現している。西村はスタジオについて、「日常から気持ちを切り替え、アーティストとして自分と向き合う場所です。また、ほかのアーティストとの交流を通じて、制作へのモチベーションを高める大切な場所でもあります。普段はお見せできない制作現場を多くの方に見ていただける貴重な機会なので、とても楽しみにしています」と語った。

アクリル絵の具を用い、世界と素材、自分との間に一瞬立ち現れる「あわい」の像を描き続けるSaeko Asaiは、スタジオの高い天井とホワイトキューブのような空間に「非日常」を感じるという。「マンションの自室で描いているときよりも、筆のストロークがよく伸びる」と話した。

TERRADA ART STUDIO TENNOZ オープンスタジオ 2026
会期:~ 9月13日(日)
会場:TERRADA ART STUDIO 天王洲(東京都品川区東品川1-33-10 TERRADA ART COMPLEX Ⅰ-2F)
時間:12:00~19:00(13日は17:00まで)
料金:無料

合同キュレーション展「u.n.l.o.c.k. tube++」

「u.n.l.o.c.k. tube++」展示風景。
小林由作品。
倉敷安耶作品。
岡田将充作品。

若手アーティストの作品を中心に展示・販売するアートギャラリーカフェ「WHAT CAFE」では、現代美術家の椿昇をゲストキュレーターに迎えた合同キュレーション展「u.n.l.o.c.k. tube++」を開催している。椿とWHAT CAFEが選んだ37人の新進アーティストによる250点超の作品が展示・販売されている。

東北芸術工科大学を卒業後、神奈川県を拠点に活動する小林由は、小学生の頃から続けているストリートダンスに着想を得て、さまざまなモチーフや形を「サンプリング」した作品群を展示した。小林は制作の傍ら、生活のためにテーマパークなどの造作物を手がける仕事に就いている。いつか自分のアトリエを持ちたいという夢があり、今回のような作品販売の機会を得られることはありがたいと語った。

倉敷安耶の作品群も印象に残った。倉敷は、ウェブ上で収集した画像や自身で撮影した写真をコラージュし、紙に転写。そこにあえて破れやひび割れを生じさせることで、歴史の蓄積や時間の経過を表現している。出品作では、マグダラのマリアと小野小町が互いに寄り添うように描かれている。倉敷は、2人の存在が男性中心主義的な社会の中でゆがめられてきたと捉え、聖書において祝福を象徴する香油を互いに塗り合い、ケアし合う姿として描いた。

WHAT CAFE EXHIBITION vol.47:WHAT CAFE×椿昇 特別合同キュレーション展「u.n.l.o.c.k. tube++」
会期:~ 9月27日(日)
会場:WHAT CAFE(東京都品川区東品川2-1-11)
時間:11:00~18:00(27日は17:00まで)
料金:無料

「WHAT MUSEUM」「PIGMENT TOKYO」

「波板と珊瑚礁─建築を遠くに投げる八の実践」より、DOMINO ARCHITECTS「PULP FICTION(jetway)」Photo by Keizo KIOKU
PIGMENT TOKYO

WHAT MUSEUMでは、開催中の建築展「波板と珊瑚礁─建築を遠くに投げる八の実践」に関連したギャラリーツアーとナイトミュージアムを実施する。ギャラリーツアーでは、企画担当者とともに展示室を巡りながら、作品に込められたメッセージや制作背景を読み解く。9月11・12日は開館時間を20時まで延長。夜の静かな展示空間で、気鋭の建築家たちの言葉や視点に触れる機会を提供する。

また、画材の販売、ラボ、ワークショップの機能を備えた絵画材料の専門施設「PIGMENT TOKYO」では、東洋美術で伝統的に用いられてきた絵絹を使うワークショップ「絵絹に花をえがく」を開催する。

波板と珊瑚礁 - 建築を遠くに投げる八の実践 ナイトミュージアム
会期:9月11日(金)・12日 (土)
時間:11:00~20:00(入場は30分前まで)

ギャラリーツアー
会期:9月12日(土)
時間:11:00~12:00
会場:WHAT MUSEUM(東京都品川区東品川2-6-10 寺田倉庫G号)
料金:要入館料

ワークショップ「絵絹に花をえがく」
会期:~ 9月13日(日)
会場:PIGMENT TOKYO(東京都品川区東品川2-5-5 TERRADA Harbor Oneビル1F)
時間:13:00~16:00
料金:1万3200円(税込)

Photo: Yuki Tsunesumi

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