パスワードはまさかの「Louvre」。ルーブル美術館のセキュリティ更新には「7年を要する」と仏政府

11月6日、フランスの国家会計検査院(Cour des Comptes)は、ルーブル美術館の「あまりにも脆弱な」セキュリティシステムに関する報告書を公表。ずさんな実態が明らかになった。

2025年10月30日、入り口に長蛇の列をなすルーブル美術館。強盗被害のあったギャラリー・アポロンは閉鎖されたままだ。Photo: Stringer/Anadolu via Getty Images

11月6日、フランスの国家会計検査院(Cour des Comptes)は、ルーブル美術館のセキュリティなどの政策に対して2018年から2024年まで調査した報告書の全文を公表した。この報告書の抜粋は、10月19日に強盗事件が起こった際に流出していた

それによると、同館の全465の展示室に対し、監視に用いられていたカメラは432台にとどまっていた。これは必要な台数のわずか39パーセントにあたる。

この状況は、2015年に行われたセキュリティに関する監査で明らかになっていた。だが、セキュリティシステム更新のための入札が実施されたのは2024年末になってからだった。報告書には「このプロジェクトの完了には数年を要し、美術館によれば2032年まで終わる見込みはない」と記されていたとロイター通信は伝えている。

これらを受けて検査院は、建物の維持管理およびセキュリティへの投資は「機関の長期的な機能維持に不可欠」であるのにもかかわらず、ルーブルが常に「目に見えて魅力的な」プロジェクトを優先してきたと批判した。こうした問題を是正し、正しい投資を行うために検査院は、作品購入の抑制、入場料の値上げ、デジタルインフラの更新を含む10項目の勧告を提示した。

だが問題は、設備面だけではない。フランスの各メディアはルーブルに強盗が入った10月19日当時、同館の監視カメラのネットワークを管理するサーバーのパスワードが「Louvre」であったと報じている。フランスの日刊紙リベラシオンによると、これは2014年のフランス国家情報システム安全庁(ANSSI)の報告書ですでに警告されていたという。

さらに同紙によれば、同館が導入していた大手企業タレス(Thales)が管理するセキュリティ用ソフトウェアへのアクセスも同様に「THALES」という単純なパスワードだったという。ANSSIはCNNの取材に対し、報告書の内容を肯定も否定もせず、「この報告は、ルーブルの今のITセキュリティ水準を代表するものとは見なせません」とコメントした。

ラシダ・ダティ文化大臣はルーブル美術館のセキュリティ体制について、近日中に新しい監視カメラが設置されることと、現在文化総局(IGAC)が巡回カメラ・監視システム・侵入検知機器の装備状況や館のガバナンスなどに関する調査を行っていることを発表している。(翻訳:編集部)

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