プリツカー賞建築家フランシス・ケレ設計、ラスベガス美術館の完成予想図が公開。2029年開館予定
アメリカ・ネバダ州で2029年に開館予定のラスベガス美術館(LVMA)が、完成予想図を公開した。設計はプリツカー賞受賞建築家のフランシス・ケレ。ラスベガスのダウンタウン地区にあるシンフォニーパークに建設される。

12月17日、2029年に開館予定のラスベガス美術館(LVMA)の完成予想図が発表された。設計を手がけるのは、2022年にアフリカ出身で初めてプリツカー建築賞を獲得したフランシス・ケレ。ケレは、その翌年に高松宮殿下記念世界文化賞(建築部門)も受賞している。
約5600平方メートルの建物は、ラスベガス近郊のモハーベ砂漠やレッドロックキャニオン、アフリカなどのサバンナ地帯に分布するバオバブの木、そしてラスベガスのガーディアン・エンジェル大聖堂から着想を得ている。Aフレーム構造が特徴的なこのカトリック教会は、1963年にアフリカ系アメリカ人の建築家、ポール・リビア・ウィリアムズの設計で建てられたものだ。
LVMAのモザイク状のファサードには近隣で採石される赤褐色の石材が用いられ、建物前広場の日除けとなる大ぶりなキャノピーのほか、彫刻庭園も設けられる。美術館の構想についてケレは、声明で次のように述べている。
「ラスベガスは、驚異的な建築の数々と、時代を超えた畏怖の念を抱かせる砂漠の風景が共存する場所です。この2つの側面を反映し、ラスベガスの象徴的な景観に自然界の存在感を取り戻す、心地よく魅力的な建物を創造したいと思います」
独立型の美術館が長く待ち望まれていたラスベガスでは、2024年秋に市が官民パートナーシップの一環として、ダウンタウン地区にあるシンフォニー・パークの土地約6000平方メートルをLVMAに提供することに合意。実現に向けて大きく前進した。建設予定地は、ブロードウェイの巡回公演やラスベガス・フィルハーモニー、ネバダ・バレエ・シアターの公演が行われるスミスセンター(Smith Center for the Performing Arts)の向かいにある。
美術館設立計画を支えてきたのは、ロサンゼルス・カウンティ美術館(LACMA)の館長でLVMAの創設理事を務めるマイケル・ゴヴァンと、今年5月に亡くなったカジノリゾート経営者、エレイン・ウィンだ。ウィンは、US版ARTnewsのトップ200コレクターに何度も選出されたアートパトロンで、LVMA創設理事会の議長でもあった。2024年9月に新しい美術館の設立が正式に発表されたとき、82歳のウィンはニューヨーク・タイムズ紙にこう語っている。
「限られた寿命の中で、最後の贈り物は何にしようかと考えています。カジノホテルの名前以外に自分の足跡を残したいのです」
LVMAは、LACMAと従来にない協定を結んでいる。LVMAではヘザー・ハーモンが専任の館長として就任し、独自の理事会が存在するものの、当面は実質LACMAのサテライト施設として運営され、LACMAの美術品や企画展、教育プログラムを借り受けることになる。この取り組みについてゴヴァンは、ニューヨーク・タイムズ紙に次のように説明している。
「ある地域で美術館を一から立ち上げるのは容易なことではありませんが、LACMAはこの美術館を誕生させるための支援ができます。(中略)おそらく、コレクションを管理するための大規模なインフラがなくても、文化へのアクセス拡大を可能にする新たなモデルとなるでしょう」
LVMAは2億ドル(約310億円)の資金調達を進めており、すでに目標額の半分を達成している。同美術館のエグゼクティブ・ディレクターに就任予定のハーモンは、完成予想図発表にあたってこう抱負を語った。
「このデザインは、素晴らしい私たちの街における多様性を体現し、ラスベガスの文化に新たな時代の幕開けを告げるものです。私たちは確信をもって2029年のグランドオープンに向けて前進しています」(翻訳:石井佳子)
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