洞窟壁画の年代測定に初成功! 「仮面」は数千年かけて描き足された?

フランス南西部のフォン・ド・ゴーム洞窟で、先史時代の壁画が初めて年代測定された。顔料に含まれる木炭を分析した結果、数千年にわたって描き加えられた可能性のある図像の存在が明らかになった。

ドルドーニュ県フォン・ド・ゴームの洞窟壁画。Photo: Centre des monuments nationaux/Centre de recherche et de restauration des musées de France, Anne Maigret.

フランス南西部、ドルドーニュ地方のヴェゼール渓谷にあるフォン・ド・ゴーム洞窟で、先史時代の壁画が初めて直接年代測定された。フランス国立科学研究センター(CNRS)などによる研究成果は3月9日付で学術誌「米国科学アカデミー紀要(PNAS)」に掲載され、ScienceDailyが7月28日に報じた。

フォン・ド・ゴーム洞窟の壁画は1901年、地元の小学校教師ドニ・ペイロニーによって発見された。洞窟内では、80頭以上のバイソンをはじめ、約40頭の馬や20頭以上のマンモスなど、230点近い図像が確認されている。なかでも、5頭のバイソンを描いたフリーズは有名だ。

同洞窟は1979年、近隣のラスコー洞窟などとともに、「ヴェゼール渓谷の先史時代の遺跡群と装飾洞窟群」としてユネスコの世界遺産に登録された。フランス国内で、先史時代の多色壁画を現地で見学できる唯一の洞窟としても知られる。

しかし、フォン・ド・ゴームを含むドルドーニュ地方の洞窟壁画は、長らく正確な年代を特定できなかった。放射性炭素年代測定には有機物由来の炭素が必要だが、この地域の黒色顔料は、炭素を含まない鉄やマンガンの酸化物のみでできていると考えられてきたためだ。

そこでCNRSの研究者らによるチームは、ラマン顕微分光法とハイパースペクトルイメージングを用い、作品を傷つけることなく黒色顔料の化学組成を分析した。その結果、洞窟内の多数の図像から、炭素を含む木炭由来の顔料が検出された。さらに、木炭が黒い描線全体にほぼ均一に分布していたことから、後世の落書きや観光客の立ち入りによる汚染ではなく、制作時に使われた顔料である可能性が高いと判断された。

これを受け、研究チームは特例として、2点の黒色画からごく微量の顔料を採取する許可を得た。対象となったのはバイソンの図像と、人間または動物の顔を表したとみられ、「仮面」と呼ばれてきた図像だ。

試料を放射性炭素年代測定にかけたところ、バイソンは現在から1万3461~1万3162年前に描かれたことが判明した。「仮面」については、部位ごとに制作時期が異なっており、なかには数千年もの隔たりがあることが示された。図像が一度に完成したのではなく、長い期間をかけて描き加えられた可能性が浮かび上がった。

今回の成果は、ドルドーニュ地方の旧石器時代の洞窟壁画を、顔料から直接年代測定できる道を開くものだ。今後、図像が描かれた時期や美術様式の変遷に加え、人々が何世代にもわたって同じ洞窟を訪れ、既存の図像に手を加えていたのかを検証する手がかりになると期待されている。(翻訳:編集部)

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