ルーブル大規模改修のコンペ結果が発表──《モナリザ》専用室新設で鑑賞環境の再編へ

ルーブル美術館の大規模改修に向けた国際建築コンペの最終審査が行われ、ステュディオス・アーキテクチャーとセルドルフ・アーキテクツのチームが選出された。ファイナリスト5組にはSANAA藤本壮介も含まれていた。一方で、セキュリティなどのインフラ対策が不十分な現状への批判も出ている。

パリのルーブル美術館。Photo: Getty Images

5月18日、フランス政府はパリルーブル美術館大改修を担当する設計チームを発表し、職員のストライキや宝飾品盗難事件捜査の長期化などで延期されていた建築コンペの選考に幕を下ろした。最終審査で選出されたのはステュディオス・アーキテクチャーとセルドルフ・アーキテクツのチームで、展示室や入口の新設を中心とする改修計画を主導する。

1985年に設立されたステュディオス・アーキテクチャーは、サンフランシスコワシントンD.C.ニューヨークロサンゼルス、トロント、そしてパリにオフィスを構える国際的な建築設計事務所として、芸術文化分野でも数々の著名プロジェクトを手がけてきた。最近の実績には、ニューヨークのフリック・コレクションやロンドン・ナショナル・ギャラリーのセインズベリー・ウィングの改修工事があり、いずれも高く評価されている。

ルーブル美術館の大規模改修プロジェクトとそれに伴う設計コンペは、2025年1月、エマニュエル・マクロン仏大統領と今年2月に辞任した前館長のローランス・デ・カールによって発表された。7億7800万ドル(最近の為替レートで約1236億円、以下同)規模の改修計画は、マクロン大統領によって「ルーブル・ヌーヴェル・ルネサンス計画」と名付けられている。

その後10月には、コンペに応募した100社以上の中から5つの設計チームが最終候補として選出された。しかし、同じ月に1億ドル(約159億円)相当の王室の宝飾品が8分足らずで盗まれるという大事件が発生。美術館内部で前例のない混乱が生じたため、今年2月に選考が中断されていた。

盗難事件後、美術館幹部は警備体制の不備について厳しい批判にさらされた。第三者調査では、事件は美術館全体にかかわる根本的なインフラの欠陥を象徴するものと指摘されている。また、5月14日に公表された議会調査報告は、盗難事件の発生以前にセキュリティ上の不備を警告していた100人以上の業界専門家や地元当局者の証言を引用しつつ、ルーブル美術館では名声を高めるプロジェクトや来館者数の増加が優先され、安全対策が軽視されていたとしている。ルーブル美術館初の女性館長だったデ・カールは、こうした問題を受けて2月下旬に辞任し、後任にはクリストフ・ルリボーが就任した。

年間来館者数が約900万人にのぼるルーブル美術館の混雑緩和を目的とした改修プロジェクトでは、新たな入口と約3000平方メートルの《モナリザ》専用展示室が建設される予定だ。完成すれば、来館者は美術館の他のエリアを通らずにこの名画を鑑賞できるようになるという。ルーブル美術館の声明によると、改修計画には「フランス古典建築の傑作の1つである美術館正面の歴史的なコロネード(列柱廊)や広場を、緑豊かな新たな景観の中で際立たせる」ことも含まれる。

同館の2026年度予算では、改修の予備調査に1億1600万ドル(約184億円)が計上されていることが1月に明らかになった。それに対し、維持管理費は1750万ドル(約28億円)で、そのうち収蔵品保護のための安全対策に充てられているのは210万ドル(約3億2000万円)にとどまるという。

美術館の過密状態はまた、組織内部における不満噴出の種にもなっている。今年初めには、3つの労働組合に所属する約350人の美術館職員がストライキを行い、《モナリザ》を専用展示室に移す計画よりも、長年先送りされてきた設備更新や建物の維持管理を優先すべきだと主張した。

ルーブル美術館側は、新設が計画されている専用展示室によって、「来館者は快適な環境で作品をじっくり鑑賞することができるようになる」としている。(翻訳:石井佳子)

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