マティスの版画を狙った白昼の盗難事件、容疑者の1人を特定。超希少本『ジャズ』も標的に?

12月7日、ブラジル・サンパウロのマリオ・デ・アンドラーデ図書館で開催されていた「本から美術館へ」展の会場に武装した2人組が押し入り、アンリ・マティスの版画8点とブラジルの巨匠カンディド・ポルティナリの版画5点を盗んで逃走した。

事件後のマリオ・デ・アンドラーデ公立図書館。入り口にはパトカーが停まっている。Photo: Nelson Almeida/AFP via Getty Images.
事件後のマリオ・デ・アンドラーデ公立図書館。入り口にはパトカーが停まっている。Photo: Nelson Almeida/AFP via Getty Images.

12月7日の日中、ブラジル・サンパウロ中心部に位置するマリオ・デ・アンドラーデ図書館に武装した2人組が押し入り、アンリ・マティスの版画8点と、ブラジルを代表するモダニズム画家カンディド・ポルティナリの版画5点が盗まれる事件が発生した。

図書館ではこの日、サンパウロ近代美術館との共同企画展「本から美術館へ」の最終日だった。本と芸術の関係に焦点を当てた同展には、フェルナン・レジェ、エリオ・オイチシカ、ホセ・アントニオ・ダ・シルヴァ、リジア・パペら30人以上の作家による作品やアートブックが集められていた。

ル・モンドの報道によれば、犯行は午前10時頃。館内に侵入した2人組は、警備員と偶然居合わせた高齢の来館者夫婦を脅迫し、展示室のガラスケースを壊して作品を奪い逃走したという。図書館には複数の防犯カメラが設置されており、サンパウロ警察は映像から容疑者の1人を特定したとしているが、逮捕に至ったかどうかは明らかにされていない。

当局は、盗まれたマティスおよびポルティナリの具体的な作品名を公表していない。しかしニューヨーク・タイムズによると、展覧会の図録から、マティスが1947年に制作した挿絵本『ジャズ』が展示されていたことが確認できるという。鮮やかな色彩のポショワール(手彩色ステンシル)版画20点が収められた同書は、100部のみ制作された希少性の高い逸品だ。2021年には『ジャズ』の1冊がオークションで77万4000ドル(約1億2000万円)で落札されている。

美術品の盗難は近年世界各地で相次いでいる。今年10月には、ルーブル美術館が所蔵する総額1億200万ドル(約156億円)の宝飾品9点が持ち去られる事件が発生し、国際的な注目を集めた。その数日前には、アメリカ・カリフォルニア州のオークランド美術館が保管施設から1000点以上の作品を盗まれていたことが後に明らかになっている。(翻訳:編集部)

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