ルーブル美術館強盗の裏で新たな事件。フランスの博物館で「1600万円相当の硬貨」を狙いすまして襲撃

ルーブル美術館で強盗事件が起こった10月19日、フランス北東部にあるラングレのドゥニ・ディドロ啓蒙の館でも約2000枚の金貨と銀貨が盗まれていたことが分かった。硬貨の推定価値は約9万ユーロ(約1600万円)とされる。

ドゥニ・ディドロ啓蒙の館。Photo: Wikimedia Commons

10月19日の夜、フランス北東部にあるラングレのドゥニ・ディドロ啓蒙の館で約2000枚の金貨と銀貨が盗まれる事件が起こったと10月22日に地元当局が発表した。

ドゥニ・ディドロ啓蒙の館はフランスの哲学者、美術批評家のドゥニ・ディドロ(1713-1784)の活動を伝える博物館で、400平方メートルの邸宅にディドロとその時代に関連する計250点の品々が展示されている。

当局の発表によると、窃盗団は夜間に同館に押し入って「非常に高度な専門知識と精度で戦利品を選別した」という。ロシアメディアのRTによると、彼らが標的としたのは、2011年の同館の改修工事中に作業員が発見した「宝物」コレクションの一部となる18~19世紀の銀貨1633枚と金貨319枚で、推定価値は約9万ユーロ(約1600万円)とされる。20日朝、博物館職員が壊れた正面玄関と粉砕された展示ケースを発見して事件が発覚した。

ラングレ市長の事務所が報道機関に語ったところでは、硬貨だけが持ち去られ、他の品は手つかずのままだった。同館は、館内の警備システムを強化する間、民間警備会社に夜間監視を委託したという。

窃盗団により盗まれた、ドゥニ・ディドロ啓蒙の館の展示品の金貨と銀貨。Phoro: X/@nexta_tv

9月初旬以降、フランスの美術館・博物館では組織的犯行と見られる強盗事件が相次いでいる。9月4日に中部リモージュのアドリアン・デュブーシュ国立博物館で650万ユーロ(約11億円)相当の国宝の中国磁器の皿2枚と花瓶1個が、9月16日にはパリの自然史博物館で60万ユーロ(約1億435万円)相当の自然金標本が盗まれている。さらに、10月12日と、10月13日から14日にかけての2度に渡り、コレーズ県サランにあるジャック・シラク大統領博物館に窃盗団が押し入り、受付係や来館者を脅した後に現金と少なくとも1つの所蔵品の時計を盗んで逃走したとBMFTV.が伝えている。

そして、10月19日の朝にルーブル美術館の事件が起こった。専門家たちはUS版ARTnewsに対し、ルーブル美術館の強盗たちの成功は短命に終わる可能性があると語った。FBI美術犯罪チームの創設者であるロバート・ウィットマンは、犯人は現場の遺留品にDNAの痕跡を残しており、「美術品窃盗における真の技術は、盗むことではなく売ることなのです」と説明した。

また、盗難美術品・骨董品・収集品を扱う世界最大の民間データベースであるアート・ロス・レジスターの回収部門ディレクターであるジェームズ・ラトクリフは、窃盗団が「専門家というより(倫理や道徳を犠牲にしてでも私利を図る)機会主義者」であり、時代遅れの警備システムにつけ込んだと話した。ラトクリフは、「ルーブル美術館は壮麗さのために12世紀から増改築が繰り返されたのであり、防衛のためではありません。このような歴史的施設に侵入することは、困難ではないでしょう」と付け加えた。

19日に被害を受けたドゥニ・ディドロ啓蒙の館も同じく、警備システムが脆弱なカテゴリーに当てはまるだろう。美術館のウェブサイトによれば、この館は「16世紀から18世紀にさかのぼる立派な邸宅である」デュ・ブルイユ・ド・サン=ジェルマン邸が利用されている。

パリの自然史博物館の事件では、先日24歳の中国人女性がバルセロナで逮捕されたが、共犯者がいたのかはまだ明らかになっていない。フランス警察は現在、ディドロ啓蒙の館での事件を、9月以降に起こった複数の強盗事件とともに捜査している。(翻訳:編集部)

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