今週末に見たいアートイベントTOP5:河原温が12年間続けた代表シリーズ、多田美波70年の創作の軌跡

関東地方の美術館・ギャラリーを中心に、現在開催されている展覧会の中でも特におすすめの展示をピックアップ! アートな週末を楽しもう! 英語版はこちら

河原温(Take Ninagawa)より、On Kawara, I Got Up at 11:11 A.M., 24.08.1968, 1968. ©︎ One Million Years Foundation. Courtesy Take Ninagawa, Tokyo.

1. MAMリサーチ012:ディアスポラ・メモリー - 境界を越えて生きるコリアン・アーティスト(森美術館)

展示風景。
展示風景。
展示風景。
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3人のアーティストからたどる、コリアン・ディアスポラの記憶

同館の調査・研究プロジェクト「MAMリサーチ」の第12弾。植民地支配、朝鮮戦争、独裁政権と民主化、経済発展、グローバル化など、20世紀以降の韓国をめぐる社会・政治状況を背景に形成されてきたコリアン・ディアスポラに焦点を当てる。国家や民族といった枠組みだけでは捉えきれないディアスポラとしての経験を、3人のアーティストの視点からたどる。

本展で紹介されるのは、日本へと渡ったクァク・インシク(郭仁植、1919年現在の韓国・大邱広域市生まれ)、ドイツに移り住んだソン・ヒョンスク(宋賢淑、1952年韓国・全羅南道生まれ)、韓国にルーツを持ち、カザフスタンに生まれたアレクサンダー・ウーガイ(1978年生まれ、アルマトイおよびソウル在住)。異なる文化のあいだで活動を続けてきた3人は、移住とアイデンティティ、故郷と異郷、国家と個人の記憶を、独自の表現を通じて探求してきた。3人の作品とライフヒストリーを通じて、ディアスポラの経験を単なる喪失や断絶ではなく、複数の文化や記憶が交差する新たな視点を提示する。

MAMリサーチ012:ディアスポラ・メモリー - 境界を越えて生きるコリアン・アーティスト
会期:4月29日(水)〜9月23日(水)
場所:森美術館(六本木ヒルズ森タワー53F)
時間:10:00〜22:00(火曜日のみ17:00まで。9月22日は22:00まで。6月〜9月の土日祝休は9:00〜22:00。入場は30分前まで)
休館日:なし


2. ダニエル・ビュレン 「Situated Works 1966-2013」(SCAI PIRAMIDE)

ダニエル・ビュレン「Situated Works 1966-2013」展示風景、SCAI PIRAMIDE、東京、2026
撮影:表恒匡 協力: SCAI THE BATHHOUSE
ダニエル・ビュレン「Situated Works 1966-2013」展示風景、SCAI PIRAMIDE、東京、2026
撮影:表恒匡 協力: SCAI THE BATHHOUSE
ダニエル・ビュレン「Situated Works 1966-2013」展示風景、SCAI PIRAMIDE、東京、2026
撮影:表恒匡 協力: SCAI THE BATHHOUSE

環境と交わる、ビュレンの実践

60年以上にわたり活動を続けるフランスの美術家、ダニエル・ビュレンの個展。自ら「視覚的ツール(outil visuel)」と位置づける白とカラーによる8.7センチ幅のストライプを用いた作品で知られる。1960年代には街路での無許可のポスター掲示などを行い、従来の美術制度に問いを投げかけたほか、パリのパレ・ロワイヤルに設置された《Les Deux Plateaux(二つの台地)》(1985-86)など、場所そのものを作品の一部と捉える実践も行ってきた。日本との関わりも深く、1970年の「東京ビエンナーレ『人間と物質展』」をはじめたびたび来日し、2007年には高松宮殿下記念世界文化賞の絵画部門を受賞している。

本展では、1960年代から2010年代までの布やキャンバスの作品に加え、8.7センチ幅のストライプ柄の幌布を市場で偶然見つけたことから生まれた初期作品《可変形態の絵画》(1966)や、1989年のICA名古屋のために制作された《5つのエレメンツ》のほか、6時間半に及ぶ映画『Beyond time, as Far as the Eye Can See』(2018)も上映される。

ダニエル・ビュレン 「Situated Works 1966-2013」
会期:5月14日(木)〜9月19日(土)※前期:5月14日〜7月18日、後期:7月23日〜9月19日
場所:SCAI PIRAMIDE(東京都港区六本木6-6-9-3F)
時間:12:00〜18:00
休廊日:日~水・祝


3. 米澤柊 個展「声なき声のキャラクター」(SNOW Contemporary)

『声なき声のキャラクター』2026、撮影=木奥 惠三
©︎Shu Yonezawa, Courtesy of SNOW Contemporary
『ただ漂ってる』2025
©︎Shu Yonezawa, Courtesy of SNOW Contemporary
『泳ぐ目たち』2025、撮影=木奥 惠三
©︎Shu Yonezawa, Courtesy of SNOW Contemporary
『声なき声のドローイング:スキャン画像』2026
©︎Shu Yonezawa, Courtesy of SNOW Contemporary

「キャラクター」の輪郭からこぼれ落ちるもの

美術家・アニメーターとして活動する米澤柊の個展。アニメーションの語源でもある「アニマ(魂)」を手がかりに、デジタルアニメーションにおけるキャラクターの身体性と、現実の生き物が持つ感情や身体性をめぐる作品を制作してきた。近年は絵画やアニメーションに加え、VJや音楽イベント、映像作品のアートワークなど活動領域を広げており、2025年にはLVMH Métiers d’Artによるアーティスト・イン・レジデンスプログラムに選出され、パリでも個展を開催した。

本展は、米澤が近年取り組んできた絵画制作を起点に構成。キャラクターを描くなかで、その輪郭を捉えようとするほど描かれていないものや、そこからこぼれ落ちるものの存在を意識するようになったという。「キャラクター(アニマ)を形づくるものとは何か」を問い直し、絵画、ドローイング、映像、立体作品を通して、姿や声、行動や言葉といった記号的な要素だけでは捉えきれない存在を探る。

米澤柊 個展「声なき声のキャラクター」
会期:7月17日(金)〜9月5日(土)
場所:SNOW Contemporary(東京都港区西麻布2-13-12 早野ビル404)
時間:13:00〜19:00
休廊日:日~火・祝


4. 河原温(Take Ninagawa)

“On Kawara,” installation view, Take Ninagawa, Tokyo, 2026. Courtesy Take Ninagawa, Tokyo. Photo by Kei Okano.
“On Kawara,” installation view, Take Ninagawa, Tokyo, 2026. Courtesy Take Ninagawa, Tokyo. Photo by Kei Okano.
On Kawara, I Got Up at 11:11 A.M., 24.08.1968, 1968. ©︎ One Million Years Foundation. Courtesy Take Ninagawa, Tokyo.

12年間、毎日の起床時刻を送り続けたポストカード

日本を代表するコンセプチュアル・アーティスト河原温(1932–2014)は、時間や存在、日常の反復などをテーマに制作してきた。1950年代末に渡米し、以後ニューヨークを拠点に、日付を描く「Today」シリーズなど、時間や生の記録を作品化する実践を展開した。本展は、河原温の代表的な連作「I Got Up」(1968-79)を紹介する。

同シリーズは、河原が12年間にわたって毎日の起床時間をスタンプし、友人や家族、コレクター、同僚らに送り続けたポストカードによって構成される。量産品のポストカードやスタンプ、郵便という既存の仕組みを通じて、ごく私的な日常行為を社会的なシステムのなかに組み込み、時間の経過そのものを作品として提示した。ポストカードの送り先には、マン・レイと親交の深かったアーティスト兼ギャラリスト、ウィリアム・コプリーも含まれる。マン・レイ展も同時開催されており、河原のシュルレアリスムの影響を受けた初期の具象表現からコンセプチュアル・アートへと至る実践を捉えることもできる。

河原温
会期:8月1日(土)〜10月3日(土)
場所:Take Ninagawa(東京都港区東麻布2-14-8 フィル・パーク東麻布 2F )
時間:11:00〜19:00
休廊日:日・月・祝日


5. 多田美波—光、凛と ゆれる(東京都現代美術館)

《周波数37306505》1965
アクリル樹脂、アルミ、鉄
東京都現代美術館蔵
「MOTコレクション Eye to Eye—見ること」(2024)展示風景
Photo: Masaru Yanagiba
光造形 1968
ガラス、金属
皇居・新宮殿、東京
撮影:野堀成美
《Mirage》1989
陶板、ステンレス
多田美波研究所蔵
撮影:多田美波研究所
《Space Eye No.4》1975
アクリル
多田美波研究所蔵
撮影:多田美波研究所

光と素材の可能性を追求した、約70年の軌跡

戦後日本を代表する抽象彫刻家・造形作家のひとり、多田美波(1924-2014)の没後初となる大規模回顧展。台湾・高雄に生まれ、朝鮮で育った多田は、戦後から晩年まで約70年にわたって制作を続けた。工業素材や加工技術を積極的に取り入れ、光の反射や透過、屈折、揺らぎを作品に取り込みながら、周囲の環境や鑑賞者の動きによって表情を変える造形を追求した。

本展では、初期の絵画から各時代の彫刻、作家が「光造形」と呼んだ照明作品まで約70点を紹介する。建築に組み込まれた作品や現存しない作品については、写真やスケッチなどの資料とともに再制作・再構成も行われる。1963年に銀座・松屋サロンに設置されたシャンデリア《チェーンデリア》は原寸大で復元され、リーガロイヤルホテル大阪のために制作された《瑞雲》(1973)の一部も、当時のクリスタルガラス・パーツ約3000個を用いて再構成される。

多田美波—光、凛と ゆれる
会期:8月29日(土)〜12月6日(日)
場所:東京都現代美術館(東京都江東区三好4-1-1)
時間:10:00〜18:00(入場は30分前まで)
休館日:月曜日(9月21日、10月12日、11月23日は開館)、9月24日、10月13日、11月24日

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