メトロポリタン美術館のジョン・ガリアーノ展に批判相次ぐ。ペース創業者も寄贈見直しを示唆

メトロポリタン美術館(MET)が来年5月に開催するジョン・ガリアーノ展に批判が相次いでいる。メットガラの開催日がホロコースト記念日と重なることも問題視され、長年の寄付者からは作品の寄贈を見直す動きも出ている。

Arne Glimcher. Photo Ben A. Pruchnie/Getty Images for Pace London
Pace創業者のアーネ・グリムシャー。Photo: Ben A. Pruchnie/Getty Images for Pace London

ニューヨークのメトロポリタン美術館(MET)が来年開催を予定しているファッションデザイナーのジョン・ガリアーノ展をめぐり、政治家や著名人から批判の声が相次いでいる。世界有数のギャラリーであるPace創業者アーネ・グリムシャーもその一人だ。

8月28日付のニューヨーク・タイムズによると、METはガリアーノ展をめぐって内部で批判に直面しているという。ガリアーノは2011年、反ユダヤ主義的な発言によりフランスでヘイトクライムの有罪判決を受けた。本人は後にこの発言について謝罪している。また裁判では、アルコールや処方薬への依存状態にあったと証言し、事件後にはリハビリ施設で治療を受けた。その後、2014年にメゾン マルジェラのクリエイティブ・ディレクターとして業界に本格復帰し、2024年まで同職を務めた。

ガリアーノ展は、METコスチューム・インスティテュートによる来年5月の大型企画展として予定されている。しかしタイムズによれば、この時期に開催すること自体が適切ではないと懸念する声も上がっている。

同紙のヴァネッサ・フリードマンとジェイコブ・バーンスタインが指摘するように、コスチューム・インスティテュートの春季展に合わせて毎年開催される資金調達イベント「メットガラ」は、例年、5月最初の月曜日に実施される。ところが来年、その日はホロコースト犠牲者を追悼する「ヨム・ハショア(ホロコースト記念日)」と重なる。

タイムズは、7月にガリアーノ展が発表されて以降、複数の寄付者が寄付の撤回や保留を示唆していると報じた。その一人がグリムシャーとみられ、同氏はMETの近現代美術部門を統括するキュレーター、デイヴィッド・ブレスリン宛てのメールで、「あなた方は、この決定がもたらす代償と、その先に広がる波紋を十分に考慮していないと思います」と強い不満を伝えたという。

さらに彼は、妻ミリーとともに「遺言でMETへの寄贈を予定していたコレクション作品についても、本気で再考している」と述べた。ただし、それがどの作品を指すのか、また正式な寄贈契約が交わされていたかは明らかになっていない。

US版ARTnewsは、Paceにコメントを求めている。

グリムシャーはこれまでにも、アグネス・マーティン、ルーカス・サマラス、ロバート・マンゴールド、マーク・ロスコらの作品をMETに寄贈してきた。また、MET創立150周年に際しては、息子マーク・グリムシャーと、当時その妻だったフェアファックス・ドーンとともに、ジュリアン・シュナーベルの1981年作を寄贈している。これらの作家は、いずれも長年ペースが取り扱ってきた。

タイムズによれば、作家エリー・ヴィーゼルの娘エリシャ・ヴィーゼルも、ガリアーノ展を「かなり悪いアイデア」と評しているという。さらに同紙は、ニューヨーク市議会議長のジュリー・メニンが、MET館長のマックス・ホライン、同館コスチューム・インスティテュート主任学芸員アンドリュー・ボルトン、そして同インスティテュートの現在の地位を築き上げ、メットガラ共同議長も務める『VOGUE』編集ディレクターのアナ・ウィンター宛ての書簡で、この展覧会を「重大な過ち」と批判したことにも言及している。

こうした状況を受け、METの理事会でも展覧会について改めて協議が行われているようだ。理事の一人であるアンドリュー・ソロモンはタイムズに対し、「キャンセル・カルチャーに屈するよりも、それと向き合うことの方が健全な前進の道だ」と語った。

タイムズは以前、METが本展についてユダヤ系団体の代表者らと協議を重ねていたことも報じている。

館長のホラインは、タイムズへの声明で次のように述べている。

「METは反ユダヤ主義、人種差別、あらゆる偏見を一切容認しません。私たちはユダヤ系コミュニティのリーダーをはじめとする関係者と緊密に協議を続けており、寄せられた懸念を極めて真摯に受け止めています」

なお、MET広報担当者は、US版ARTnewsの取材に対し、現時点でコメントしていない。(翻訳:編集部)

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