2027年メットガラのテーマは「ジョン・ガリアーノ」。過去の反ユダヤ主義的言動をめぐり賛否

メトロポリタン美術館は、2027年春のメットガラと企画展でジョン・ガリアーノを顕彰すると発表した。SNSでは、ガリアーノの過去の反ユダヤ主義的言動をめぐり、早くも賛否の声が上がっている。

2011年春夏パリ・ファッション・ウィークに行われた、クリスチャン・ディオールのショーに出席したジョン・ガリアーノ。Photo: Stephane Cardinale/Corbis via Getty Images

メトロポリタン美術館は7月31日、2027年春のコスチューム・インスティテュート企画展で、ファッションデザイナーのジョン・ガリアーノを特集すると発表した。これにあわせ、同展の開幕を祝う資金調達イベント「メットガラ」も、ガリアーノをテーマに開催される。メットガラは同館が主催し、ヴォーグが企画・運営に深く関わっている。ニューヨーク・タイムズなどが伝えた。

展覧会「John Galliano: Horizons」は、2027年5月9日から2028年1月9日まで開催される。ガリアーノの約40年にわたる創作活動の全貌を検証する初の大規模な美術館展で、衣服やアクセサリーをはじめ、スケッチ、仮縫い、リサーチブック、資料などを紹介する。ガリアーノは、メトロポリタン美術館で存命中に単独展が開催されるデザイナーとして、イヴ・サンローラン、川久保玲に続いて3人目となる。

ガリアーノは1960年、イギリスの海外領土ジブラルタルに生まれ、幼少期に家族とともにロンドンへ移住した。セントラル・セント・マーチンズでファッションを学び、1984年、フランス革命後の奇抜な装いで知られる若者たちに着想を得た卒業制作「Les Incroyables(レ・ザンクロワイヤーブル)」で高い評価を獲得。その後、自身のブランドを立ち上げた。

ディオールを巨大ブランドへ育てる

1990年代初頭に活動拠点をパリへ移し、1995年にはジバンシィの主任デザイナーに就任。フランスの名門オートクチュール・メゾンを率いた初のイギリス人デザイナーとなった。翌1996年にはクリスチャン・ディオールのデザイナーに抜擢され、1997年春夏オートクチュール・コレクションでデビュー。歴史や絵画、映画、異文化などを融合させた華麗な服と劇場型のショーによって、同ブランドの存在感を世界的に高めた。2000年春夏コレクションでは、現在もディオールを代表するアイテムとして知られる「サドルバッグ」を発表している。

しかし2011年、パリのカフェで客に反ユダヤ主義的、人種差別的な暴言を浴びせたことが発覚。別の機会に酩酊状態で「私はヒトラーを愛している」と発言する映像も公開された。ガリアーノはディオールと自身のブランドから解雇され、同年9月、パリの軽罪裁判所は出身・宗教・人種などに基づく公然侮辱の罪で有罪を認定し、執行猶予付きの罰金6000ユーロ(現在の為替で約110万円)を言い渡した。

2017年1月25日、フランス・パリで開催されたメゾン・マルジェラの2017年春夏コレクションショー。Photo: Estrop/Getty Images

ガリアーノはその後、自らの言動を謝罪。当時の記憶はないとしたうえで、アルコールや薬物への依存に苦しんでいたと説明した。ファッション界から一時身を引き、依存症の治療を経て、2014年にメゾン マルジェラのクリエイティブ・ディレクターとして復帰。同ブランドが培ってきた解体と再構築の手法に、自身の物語性や高度なクチュール技術を融合させた。

なかでも、ブラッサイが撮影した夜のパリなどに着想を得た2024年春夏「アーティザナル」コレクションは、衣服、メイク、音楽、演出を一体化したショーとして大きな反響を呼んだ。ガリアーノは同年12月、約10年間務めたクリエイティブ・ディレクターを退任している。

2026年3月には、ZARAと2年間にわたるクリエイティブ・パートナーシップを結んだことが明らかになった。ZARAのアーカイブを独自の視点で「再著述(re-author)」するプロジェクトで、最初のコレクションは同年9月に発売される予定だ。

過去の反ユダヤ発言が再燃

一方、今回の展覧会をめぐっては、ガリアーノの過去の反ユダヤ主義的、人種差別的な言動を理由に、X上で批判的な投稿が相次いでいる。

あるユーザーは、市内で相次ぐヘイトクライムに触れながら、「ニューヨークで反ユダヤ主義が高まっているこの時期に、(メトロポリタン美術館の理事であり、『ヴォーグ』のグローバル・エディトリアル・ディレクターでもある)アナ・ウィンターが、よりによって今、ガリアーノを顕彰すると決めたことには驚くほかない」と投稿。別のユーザーも、ガリアーノを取り上げる企画が大きな議論を呼ぶのは避けられないと指摘した。

ガリアーノは、ディオールを現代的な巨大ラグジュアリー・ブランドへと発展させるうえで重要な役割を果たした人物でもある。ゼンデイヤキム・カーダシアン、アマル・クルーニーらセレブリティは現在も、レッドカーペットでガリアーノが手がけた過去の作品をたびたび着用している。

アナ・ウィンターは長年、ガリアーノの最も熱心な擁護者の一人であり続けてきた。今回の展覧会について、ニューヨーク・タイムズに送ったテキストメッセージで次のようにコメントしている。

「これほどの規模の展覧会に、ジョン・ガリアーノ以上にふさわしい人物はいません。デザイナーは、一つのコレクションで世界を変えることを夢見ます。ジョンはそれを何度も繰り返し成し遂げてきました。彼のキャリアは、たった一つの瞬間によって定義されるものではありません。その瞬間を、彼が生涯背負い続けることになるとしてもです。この展覧会は、いかなる暗部からも目をそらしません」

実際、メトロポリタン美術館は展覧会でガリアーノの功績だけでなく、2010年から2011年にかけての反ユダヤ主義的、人種差別的、反アジア的な言動と、その後の処分や社会的評価も正面から扱う方針を示している。

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