今週末に見たいアートイベントTOP5: 日本のシュルレアリスムの歴史を約120点で回顧、ヴェネツィア・ビエンナーレ代表作家、毛利悠子ほか2名の三人展
関東地方の美術館・ギャラリーを中心に、現在開催されている展覧会の中でも特におすすめの展示をピックアップ! アートな週末を楽しもう!
1. anonymous art project 「collective 2024 Vaghe onde sole」(OMOTESANDO CROSSING PARK)
2024ヴェネツィア・ビエンナーレ日本代表の毛利悠子を中心とした作品展
国内外で活躍する作家と若手作家による新たなアート・コレクティブの形態を発信する 「collective 2024」。3回目となる今回は、2024年のヴェネツィア・ビエンナーレ日本館代表アーティストに選ばれた毛利悠子のインスタレーションを中心に、デヴィッド・ホーヴィッツ、平川紀道の作品を展示する。
毛利は重力、風、光など、環境の中に存在するが目に見えない力の働きに着目した作品を手がけてきた。一方ホーヴィッツは時間や距離といった概念から、花や石など身近な素材を扱ったコンセプチュアルな作品で知られる。平川は、コンピュータ・プログラミングによる数理的処理そのものや、その結果を用いたインスタレーションを制作してきた。展覧会のタイトルはイタリア語で「ヴァーゲ、太陽はどこにあるの」という意味を持つ「Vaghe onde sole」。その言葉が示すものとは。また、会場であるOmotesando Crossing Parkの屋外では、東慎也、鬼頭健吾、山崎雅未の作品展示のほか、木村貴史、蜷川実花の映像作品上映がある(木村は~3月15日、蜷川は3月18日~25日)。
anonymous art project 「collective 2024」
会期:3月4日(月)~ 3月25日(月)
会場:OMOTESANDO CROSSING PARK(東京都港区南青山5丁目1−1)
時間: 10:00 ~20:00
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2. ダニエル・ブラッシュ展 ー モネをめぐる金工芸(21_21 DESIGN SIGHT)
伝説的作家が彫刻で表現する印象派の「光」
パリ本校を起点に東京で定期的に講座を開催するレコール ジュエリーと宝飾芸術の学校が主催する展覧会。金属加工職人であり、宝飾職人、哲学者、エンジニア、画家、そして彫刻家でもあるアメリカのアーティスト、ダニエル・ブラッシュ(1947‐2022)の創作を2章仕立てで紹介する。
第1章では、ジュエリーから芸術作品、オブジェまで、ブラッシュの幅広い作品の中に見られる多様な素材や表現方法を紹介する。第2章では、ブラッシュの連作「モネについて考える」に焦点を当てる。アーティストとしてフランス印象派の画家が使う色彩、とりわけモネの淡いピンク、セルリアンブルー、カドミウムイエローなどの光を取り入れた色相に興味を持ったブラッシュは、数か月間ヨーロッパに滞在し、アルル、ルーアン、ジヴェルニー、パリなどモネが題材とした地を訪問。それらの色使いを理解するための研究を重ねた。そして、手彫りによる彫刻作品の制作を始める。これらの連作は、光を分割する特定の角度で綿密に繊細に彫ることで、油彩や水彩など、光以外の色素では作り出せない、温かく、深く、情緒に訴える色彩を表現することに成功している。
ダニエル・ブラッシュ展 ー モネをめぐる金工芸
会期:1月19日(金)~ 4月15日(月)
会場:21_21 DESIGN SIGHTギャラリー3(東京都港区赤坂9-7-6)
時間: 10:00 ~19:00
3. 生誕120年 安井仲治 僕の大切な写真(東京ステーションギャラリー)
土門拳や森山大道を魅了したアマチュア写真家の回顧展
アマチュア写真家たちの旺盛な探求によって、豊かな芸術表現として成熟していった大正・昭和戦前期の日本の写真界を牽引した、安井仲治(やすい・なかじ、1903-1942)の20年ぶりとなる回顧展。安井は10代半ばから写真を始め、18歳にして名門の浪華写真俱楽部に所属。全国にその名が知られる存在となるも、わずか38歳で亡くなった。約20年という短い活動期間の中で、安井の仕事は多彩を極めており、その作品は同時代の写真家をはじめ、土門拳や森山大道など後世の写真家たちからも大きな称賛を得ている。
本展は、戦災を免れたヴィンテージプリント約140点、ネガやコンタクトプリントの調査に基づいて制作されたモダンプリント約60点のほか、さまざまな資料を展示し安井仲治の仕事の全貌を明らかにする。それと同時に、安井の活動を実証的に跡付け、写真の可能性を切りひらいた偉大な作家の仕事を現代によみがえらせる。
生誕120年 安井仲治 僕の大切な写真
会期:2月23日(金・祝)~ 4月14日(日)
会場:東京ステーションギャラリー(東京都千代田区丸の内1-9-1)
時間: 10:00 ~18:00(金曜は20:00まで、入場は30分前まで)
4. 記憶:リメンブランス―現代写真・映像の表現から(東京都写真美術館)
7組8作家が試みる「記憶」への多様なアプローチ
写真や映像は、人々のどのような「記憶」を捉えようとしてきたのか。 これらのジャンルでは、現場で記録するルポルタージュやドキュメンタリーだけではなく、観る者の感覚を揺さぶり、想像力を拡張させることで目には見えない記憶を伝える試みも続けられており、作家たちのアプローチは多様だ。
本展は、日本やベトナム、フィンランドを拠点とする7組8名のアーティストたちによる新作や日本未公開作を含む70余点を紹介。篠山紀信の『決闘写真論』(1976)における〈誕生日〉、〈家〉における記憶への示唆を起点としながら、高齢化社会や人工知能(AI)などの今日の記憶と関連するテーマまで焦点を当てる。出品作家は篠山紀信、米田知子、グエン・チン・ティ(ベトナム)、小田原のどか、 村山悟郎[コンセプト:池上高志(サイエンス)+村山悟郎(アート)/実装:Alternative Machine + Qosmo, inc.] 、マルヤ・ピリラ(フィンランド)、 Satoko Sai + Tomoko Kurahara
記憶:リメンブランス―現代写真・映像の表現から
会期:3月1日(金)~ 6月9日(日)
会場:東京都写真美術館(東京都目黒区三田1-13-3恵比寿ガーデンプレイス内)
時間: 10:00 ~18:00(入場は30分前まで)
5. 「『シュルレアリスム宣言』100年 シュルレアリスムと日本」(板橋区立美術館)
作品や資料約120点で日本のシュルレアリスムの歴史を辿る
1924年、フランスの詩人、文学者のアンドレ・ブルトンが「シュルレアリスム宣言」を発表して100年。詩や思想、絵画などさまざまなジャンルに多大な影響を及ぼしたこの芸術運動は、当時の日本の画家たちに大きな影響を与えた。
1920年代後半から古賀春江や東郷青児、福沢一郎をはじめとする人々がシュルレアリスムを先駆的に試みた。1930年代になると若い画家や画学生たちがエルンストやダリの作品から大きな影響を受け、靉光、北脇昇ら日本のシュルレアリスムを代表する作家が活動する。しかし、戦時中にシュルレアリスムは危険思想として監視の対象となるとともに、戦死する画家も現れ、活動は困難を極めた。それでも戦後、その影響は絶えることはなく、山下菊二をはじめとする画家たちは混迷する社会と向き合いながら、日本独自の表現を生み出した。本展は、約120点の作品と資料で、東京のみならず日本各地で展開されたシュルレアリスムの潮流を辿ると共に、戦中、戦後の激動の時代、前衛表現によって時代と対峙した画家たちの軌跡を検証する。
「『シュルレアリスム宣言』100年 シュルレアリスムと日本」
会期:3月2日(土)~ 4月14日(日)
会場:板橋区立美術館(東京都板橋区赤塚5-34-27)
時間: 9:30 ~17:00(入場は30分前まで)