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ブルックリン美術館が200年ぶりにロゴをリニューアル。アパレルや水筒などグッズも充実

ニューヨークのブルックリン美術館が創設200年を記念してロゴを刷新した。同館は今後、「多面的な来場者」のための文化的ハブとして機能することを目的としているが、今回のリブランディングによって果たしてそれは実現できるのだろうか。

ロゴのリニュアールとともに発表されたミュージアムグッズ。Photo: Courtesy of The Brooklyn Museum of Art

創設200周年を迎えたブルックリン美術館は、「最先端の美術館」として生まれ変わろうとしている。だが、ロゴのデザインを変えるだけでそれを実現できるのだろうか。

新たに誕生した美術館のロゴは、サンセリフフォントで作られており、「Brooklyn」の二つの「o」、そして「Museum」の末尾の「u」と「m」が重なっている。また、文字を挟んでいる二つのドットは、美術館の外観に彫られている古代の哲学者や劇作家、詩人の名前を縁取る装飾に着想を得たという。

「作家や思想家に対する目配せは、図書館としての始まった当館と、芸術が交差する性質と結びついているのです」と美術館は声明を発表し、こう続けた。

「当館は象徴的な建物に注目し、マッキム・ミード・アンド・ホワイト(*)による新古典主義的なデザインからモダニズムへの移行した1930年代、そしてよりオープンで居心地の良い空間を作り出した最近のプロジェクトまで、その変遷を重視しています。新しく作られたロゴは、変化を続けてきた当館の過去と、現代的な施設として存在する私たちのアイデンティティと一体化しているのです」

*19世紀末から20世紀初頭のアメリカで最も影響力をもった建築事務所。

ロゴのデザインは、館内のグラフィックデザイナーと、ブルックリンを拠点とするグラフィックデザインスタジオのアザー・ミーンズによって制作された。

しかし、さまざまな形の看板やデジタルキャンペーン、商品などに鮮やかな色が施された新しいロゴを導入することで、ブルックリン美術館のイメージを刷新できるのだろうか。新たにデザインされたロゴは、1972年のマッシモ・ヴィネッリが手がけた、百貨店チェーンのブルーミングデールズのロゴをどことなく彷彿とさせる。今のところ批評家の注目はなく、新しいデザインはまだ美術館が期待していたような反響を呼んでいない。

ニューヨーク市も「I ❤︎ NYC」のロゴを2023年に刷新したが、賛否は分かれており、大半のニューヨーカーたちは昔の書体をを好んでいるようだ。それ以外にも、メトロポリタン美術館は「M」の文字をダ・ヴィンチの作品に見立ててロゴのデザインを変更している。この変更は、「乗客がすし詰めになって停車している赤い2階建てバス」に例えられる批判を浴び、美術館にとっては苦い結果となった。

「美術館との関わり方は時代を重ねるごとに変化しています。私たちは人々の要求に応え、美術館の豊かな歴史に敬意を表し、活気に満ちた新しいロゴを必要としていました。そして、開館200周年というふさわしいタイミングで、新しいロゴを制作することにしたのです」と、ブルックリン博物館館長を務めるのアン・パステルナークは声明に記した。

2世紀の歴史をもつブルックリン美術館はどのような未来を描いているのだろうか。同館の声明によれば、美術館は「多面的な来場者」のための文化的ハブとして存在することを構想しており、「美術館や教育施設であると同時に、新たなアイデアが飛び交う場、そして週末に人々が集まる場」が共存することを望んでいるという。同館はここ数年、アート界の重鎮よりも一般観客にアピールする展覧会に軸足を移しており、コメディアンのハンナ・ギャズビーがピカソの展覧会をキュレーションしたり、全体の入場者数を増やすために毎年数え切れないほどのファッションショーを開催したりしている。

百貨店チェーンのロゴを模倣した背景には、さまざまな人を美術館に迎え入れるという思惑があるのかもしれない。(翻訳:編集部)

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