メトロポリタン美術館、経営破綻した暗号資産大手FTXからの寄付金返還を決定
メトロポリタン美術館は、2022年に破産した暗号資産の交換業大手FTXトレーディングに対し、同年にFTXが寄付した55万ドル(約7700万円)を返還すると発表した。
FTXは現在、多くの経営破綻企業の資産回収を手掛けた経験を持つ新CEO、John Ray IIIのもと、資金回収に努めている。彼は、創業者で前CEOのサム・バンクマンフリードが在任中に行った多くの寄付に注目した。
メトロポリタン美術館対して、FTXは2022年3月に30万ドル(約4000万円)、11月に25万ドル(約3500万円)と、2回に分けて寄付を行っていた。送金元はFTX.USを運営するWest Realm Shires Servicesだ。
FTXが6月2日に提出した申立書には、「メトロポリタン美術館とFTXは寄付金の返還に関して誠実かつ独立した立場で話し合いを行い、同館は債務者へ寄付金を返還することに応じた」と書かれている。
前CEOバンクマンフリードは、マサチューセッツ工科大学(MIT)在学中に、哲学者ウィル・マカスキルの授業を受け、「多くのお金を稼ぎ、多くを寄付するべきだ(earning to give)」という考えに感銘を受けた。そして起業後、彼が行った「効果的利他主義」という哲学的・社会的な運動は、シリコンバレーの人々に支持された。
バンクマンフリードが設立した基金は2022年、1億6,000万ドル(223億円)の寄付金を拠出した。と同時に、FTXの多額の資金は不動産の購入や政治献金、自身が保有するヘッジファンド、Alameda Researchの運営にも使われていた。そんな中で、FTXのトークン、FTTの信用性が疑問視されたことによる、顧客のFTT引き出し騒動が発生。それに耐えうる資金力が無かったため、破綻することとなった。
FTXが危機に陥ったとき、バンクマンフリードはVoxのジャーナリスト、ケルシー・パイパーに、「効果的利他主義」についてこう語っている。
「社会問題への関心など、欧米人の間で正しいとされる振る舞いをすることでみんなに好かれる。そんな馬鹿げたゲームに踊らされる人たちがかわいそうです」
Decryptによると、FTXから寄付を受けた様々な機関や政治家が返金に応じ、4月下旬から現在までで620万ドル(約8億6400万円)が回収されたという。(翻訳:編集部)
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