ブルックリン美術館の館長宅がペンキまみれ。親パレスチナ派の抗議行動のターゲットに
ブルックリン美術館のアン・パステルナーク館長の自宅がイスラエルのガザ地区攻撃に対する抗議行動のターゲットにされたことが6月12日明らかになった。
ブルックリン美術館のアン・パステルナーク館長の自宅がイスラエルのガザ地区攻撃に対する抗議行動の標的にされ、一夜のうちに変わり果てた姿になった。玄関と窓には赤ペンキがぶちまけられ、2本の柱の間には「アン・パステルナーク/ブルックリン博物館/白人至上主義シオニスト」と大きく書かれた横断幕が広げられている。横断幕には「ジェノサイドの資金」という小さな赤文字が添えられていた。
6月12日、ニューヨーク市のエリック・アダムス市長はX(旧ツイッター)で、パステルナーク館長宅の被害の報告と共に、ほかにもブルックリン美術館の評議員数名の自宅が狙われたと伝えた。 被害を受けて、アダムス市長は「今朝パステルナーク館長に会い、私たちの街にこのような憎しみが存在するのが耐えられるものではないと話し合いました。ニューヨーク市警は捜査中であり、私たちはこの事件の犯人を裁判にかけるつもりです」とコメントし、次のようなメッセージを送った。
「これは平和的な抗議でも言論の自由でもありません。あからさまで容認できない反ユダヤ主義であり、犯罪です。このような行為は、いかなる理由があろうとも、ニューヨークでは決して許されるものではありません。このような憎しみの矛先を向けられたアン・パステルナーク館長と理事会のメンバーにお見舞い申し上げます」
同日、パステルナーク館長を含む約240人の美術館の要職が所属する業界団体、美術館長協会(AAMD)も声明を発表。「文化的リーダーとして、またさまざまな背景や経験を持つ人間として、私たちはイスラエルとハマスの争いがもたらす感情を理解しています。その上で私たちは、この行為を明確かつ強力に非難します」
「デモ参加者が自分たちの大義を追求するために、個人を攻撃する権利を持っているということにはなりません。誰かの家であろうと美術館であろうと、このような行為は許しがたいものです。言論の自由や紛争の解決に対しても大きなイメージダウンになるでしょう」と館長宅での抗議行動を糾弾した。
ガザの保健当局によると、ハマスによるイスラエル攻撃が起こった2023年10月7日以降、イスラエルによるガザへの空爆と地上作戦による死者数は3万7000人以上にのぼる。停戦の目途もつかない中で、イスラエルのガザ地区攻撃に対する抗議行動は激化している。
2024年5月31日、ブルックリン美術館に約30人の活動家が侵入してロビーを占拠。太鼓を打ち鳴らして横断幕を振り、同館がガザでのパレスチナ人殺害を「ジェノサイド」と認識し、非難するよう求めた。館外には約1000人の活動家が取り囲んでおり、そのうちの何人かが同館のガラス製の屋根に登り、「パレスチナをジェノサイドから解放せよ」と書かれた大きな横断幕を広げた。この抗議行動に大勢の警察官が駆け付け、デモクラシー・ナウによると、少なくとも34人の参加者が逮捕されたという。
その後数日間、活動家たちは、デモの現場でニューヨーク市警(NYPD)が参加者に対して過剰な力を行使したことを非難した。Hyperallergicの取材に対しブルックリン美術館の広報担当者は、デモ発生時にニューヨーク市警へ通報はしていないと話した。同館は市の所有地にあるため、警察が敷地内に入る時に許可を得る必要がないのだ。その上で、「(5月31日に起きたデモでの)警察の行為は残忍で破壊的なものでした」とコメントした。また、同館はデモ参加者への告発は考えておらず、「今後はNYPD指導部と協力しながら騒動の鎮静化に注力したい」と話した。
活動家たちがメトロポリタン美術館やニューヨーク近代美術館をはじめとする主要な美術施設で抗議行動を行う大きな目的は、イスラエル軍と関わりのある企業からの財政支援断ち切りの要求だ。この声は活動家のみならずアーティスト、文化関係者からも上がっている。
2023年12月にブルックリン美術館で行われた抗議デモでは、イスラエルの兵器メーカーであるエルビット・システムズに投資し、イスラエル国防軍寄付基金を支援しているバンク・オブ・ニューヨーク・メロンからの資金援助を断つことを求めた。それについて同銀行は2024年4月、フィナンシャル・タイムズ紙に対し、エルビットに投資しているのは「パッシブ運用という投資戦略上のことで、株式はごくわずかしか保有していない」と説明している。(翻訳:編集部)
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