揺れるアメリカの芸術教育。またもや由緒ある大学が閉校を発表、学生や職員らに動揺広がる
アメリカで最も長い歴史を誇る私立芸術大学の一つ、ユニバーシティー・オブ・ジ・アーツが6月1日、同校のソーシャルメディアと地元紙の記事を通じて、6月7日をもって閉校すると発表した。同校は近年、学生数の減少などの理由から経営難に陥っていることが度々報じられていた。
アメリカではいま、アート教育の足元が揺らいでいる。コロナ禍の影響や学生数の減少などを理由に、歴史ある複数の芸術大学が立て続けに閉校に追いやられているのだ。
そんな中、6月1日(アメリカ現地時間)にアメリカ・ペンシルベニア州フィラデルフィアにある私立芸術大学、ユニバーシティー・オブ・ジ・アーツ(以下、UArts)は、6月7日をもって閉校することを発表した。同地域の大学の認定機関である中部州高等教育委員会(MSCHE)も同日、UArtsの大学認定を即時取り消したと公表。フィラデルフィアではほかにも、国内最古の芸術学校であるペンシルベニア美術アカデミー(PAFA)が2025年度末までに閉校することが決まっている。
UArtsもまた、アメリカで最も長い歴史を持つ芸術大学の一つ。同校に通う1149人の学生と約700人の教職員のほとんどは、フィラデルフィア・インクワイアラー紙が金曜日に出した閉校のニュースと大学のソーシャルメディアで閉校について知ったといい、その後、大学からEメールで正式発表があったようだ。
同校は金曜日の夜、インスタグラム等のソーシャルメディアに次のように投稿している。
「今日は心が痛む日です。ジ・アーツは、2024年6月7日(金)をもって閉校となります。6月3日(月)には、学生、教職員、職員を対象にタウンホールミーティングを開催し、誠心誠意、皆様からの質問や懸念に答える場を設けます」
同校には2013年時点で2038人の生徒がいたが近年は入学者数が激減しており、さらには大規模なインフラ改修など予想外の出費によって財政難に陥っていた。ニューヨークタイムズ紙が報じたところでは、昨年同大学の学長に就任したケリー・ウォークはインクワイアラー紙の取材に対し、「最善の努力にもかかわらず、最終的に本校が存続し、その使命を果たすための実行可能な道筋を見つけることはできなかった」と述べているという。
ジ・アーツの歴史は1870年にまで遡る。同年、フィラデルフィア音楽アカデミーが設立され、1876 年にはペンシルバニア美術館および応用芸術学校(PMSIA)が誕生。1964年に学校は美術館から独立し、フィラデルフィア芸術大学(PMCA)に改名された。その後、1985年にフィラデルフィア芸術大学とフィラデルフィア舞台芸術大学が合併し、ユニバーシティー・オブ・ジ・アーツとなった。現在、同校には美術、デザイン、映画、ダンス、音楽、演劇の学部と大学院があり、卒業生には、アーヴィング・ペンやアレックス・ダ・コルテ、スティーブ “ESPO” パワーズ、タチアナ・ファズラリザデなどのアーティストのほか、著名な俳優や音楽家などが多く名を連ねている。