香港のメガコレクター、エイドリアン・チェンが中国本土に約1900億円のアート複合型施設建設へ。日本からは藤本壮介が参加
メガコレクターとして知られる香港の不動産王、エイドリアン・チェンが、自身が創設したアートモール「K11」の中国本土初進出を発表した。巨大な文化複合型施設の建設が予定されているのは、香港の対岸に位置する広東省深センのウォーターフロントだ。
新しい施設は「K11 Ecoast」と名付けられ、深センの南山区プリンス・ベイで開発が進められる。ここは、中国本土でも特に経済発展が著しい地区の1つだ。K11によると、22万平方メートルを超える敷地に多目的アートスペース、オフィスビル、遊歩道を建設予定で、総額14億ドル(約1900億円)の複合型施設になるという。
このプロジェクトでは、50人の錚々たる世界的建築家がエイドリアン・チェンとタッグを組んでいる。たとえば、日本の藤本壮介、英国のデビッド・チッパーフィールド、オランダのレム・コールハース建築事務所OMAなどだ。
また、深センのユニークな文化に敬意を表し、国内外の作家がパブリックアートの制作を予定。参加アーティストには英国のフィリダ・バーロウ、ポーランドのモニカ・ソスノフスカもリストアップされている。この2人はメガギャラリーのハウザー&ワースを代表する世界的アーティストで、バーロウは2021年の森美術館「アナザーエナジー展」の出展アーティストの1人、ソスノフスカは15年に銀座のメゾンエルメスフォーラムで個展が行われている。
K11グループの設立は2008年。香港・尖沙咀(チムサーチョイ)で、アートとショッピングが楽しめる7階建てのK11アートモールを09年にオープン。19年には、やはり尖沙咀の海岸沿いに、ライフスタイル、カルチャー、アートの融合をコンセプトとした巨大モール、K11 MUSEAが誕生している。
K11 Ecoastは、K11グループの親会社である新世界発展有限公司(ニュー・ワールド・デベロップメント)と深センの招商局蛇口工業区控股(チャイナ・マーチャンツ・シエーコ・インダストリアル・ゾーン・ホールディングス)が共同開発し、2024年末にオープン予定。
なお、このプロジェクトは、中国政府が推進しているグレーターベイエリア構想の一環として計画されている。同構想は、2035年までに香港や深センを含む中国南部の9都市に、巨大経済圏を実現しようという取り組みだ。(翻訳:鈴木篤史)
※本記事は、米国版ARTnewsに2022年7月21日に掲載されました。元記事はこちら。