アートフェア大手のフリーズを新設の企業が約290億円で取得。現経営陣は入れ替えなし
世界各地でアートフェアを展開するフリーズが、新たに設立された企業に売却される。新会社の設立者は、フリーズを傘下に持つエンデバー・グループ・ホールディングスの前CEO、アリ・エマニュエルだ。

ロンドンを本拠とする大手イベント・メディア会社のフリーズが、かねてからの観測通り、エンデバー・グループ・ホールディングスから売却されることが決まった。買収するのは同グループの前CEOであるアリ・エマニュエルが設立した新会社と、アポロ・グローバル・マネジメント、レッドバード・キャピタル・パートナーズなどの投資家コンソーシアム。
買収は今年の第3四半期までに完了する見込みで、フィナンシャル・タイムズ紙が報じた消息筋の話では、買収額は約2億ドル(約290億円)とされる。諸条件は明かされていないが、1月時点でエマニュエルは、すでに買収資金として1億ドル(約145億円)を集めていたという。プレスリリースによると、サイモン・フォックスCEOなどフリーズの現経営陣はそのまま新会社に移動する。
ハリウッドの大手タレント・エージェンシーやスポーツマネジメント会社を擁するエンデバー・グループ・ホールディングスは、3月にオーナーであるプライベート・エクイティ・ファンドのシルバーレイクによって完全非公開化されていた。
アートフェア大手のフリーズについては、昨年10月から売却が検討されているとの観測があり、先月までは国際テニストーナメントのマイアミ・オープンとマドリード・オープンも売却対象に含まれると見られていた。4月のブルームバーグによる報道では、この2大会を含めた売却額は10億ドル(約1450億円)を超えるとされている。今回の発表にテニストーナメントは含まれていないが、新会社はエンデバーからの獲得を目指していると報じられている。
2016年にエンデバーは、エマニュエルの指揮下でフリーズの株式を取得。当時、フリーズはロンドンで2つ、ニューヨークで1つのアートフェアを運営しており、エンデバー傘下に入ったのちは、2019年にロサンゼルスで、2022年にソウルで新たなフェアを立ち上げた。2023年には、経営難に陥っていたエキスポ・シカゴとニューヨークのアーモリーショーを買収したことが大きな話題となっている。
今回の発表は、フリーズによるフェアが重なる時期に飛び込んできた。4月27日に第12回エキスポ・シカゴが幕を閉じ、5月7日にはフリーズ・ニューヨークがザ・シェッドで開幕する(5月のニューヨークは、ほかにもさまざまなフェアが同時期に開催される)。
買収に関する声明で、エマニュエルは次のように述べている。
「フリーズは、仕事上でも個人的にも、常に私のインスピレーションの源です。10年近くフリーズのチームと仕事をする中で、そのコミュニティの強さ、そして現代アートへの理解や裾野を広めるというミッションへの意欲を肌で感じてきました。フリーズは、さらなる成長に向けて好位置にあり、我われの新たなグローバル・イベント・プラットフォームの戦略的な基盤となるものです」(翻訳:石井佳子)
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