フィンランド、ロシア館継続なら首脳級出席見送りへ──ビエンナーレ対応に圧力
第61回ヴェネチア・ビエンナーレ(5月9日〜11月22日)の開幕が迫る中、ロシア館の復帰をめぐる政治的緊張が高まっている。フィンランド政府は4月16日、同館が予定通り公開される場合、政治指導者は出席しない方針を明らかにした。

第61回ヴェネチア・ビエンナーレの開幕が迫る4月16日、フィンランド教育文化省は声明を発表。ロシア館が予定通り公開される場合、今年のビエンナーレに政治指導者が出席しない方針を明らかにした。
声明では、「ロシアによるウクライナ侵攻が続く限り、ロシアの参加は認められるべきではない」との立場を明確にした。一方で、科学・文化相マリ=レーナ・タルヴィティエは、フィンランドの芸術・文化を支援するために一部の政府関係者は引き続き現地を訪れ、フィンランド館は予定通り開館すると述べている。
ロシアは2022年のウクライナ侵攻以来初めて、ナショナル・パビリオンでの参加に向けた準備を進めている。フィンランドの今回の決定は、全面的なボイコットには踏み込んでいないものの、ビエンナーレに対し、ロシアの参加撤回を求める政治的圧力が強まっていることを示している。
これに先立つ3月には、ラトビアの文化相アグネセ・ラーツェの主導のもと、フランスやポーランドをはじめとする欧州各国の文化相および外相22人が、ビエンナーレ宛ての公開書簡に署名した。書簡はロシアの参加を「深く憂慮すべき事態」とし、「芸術交流の名のもとに国家主導の文化的プロパガンダが展開されるリスクに重大な疑問を投げかける」と指摘している。フィンランド政府関係者もこの書簡に名を連ねた。
さらに今月初め、欧州委員会はビエンナーレに対し、ロシアの参加が対ロシア制裁に違反している可能性があるとして、「これらの懸念に対する説明」および「是正措置の内容」の報告を求めた。十分な対応が得られない場合には、2028年開催に向けた助成金200万ユーロ(約3億7000万円)を打ち切る可能性があると警告している。
これに対しビエンナーレ主催者は、直近の3月の声明で、イタリアが承認する全ての国からのパビリオン申請を受け入れる中立的な組織であるとの立場を改めて示し、「文化と芸術のいかなる排除や検閲にも反対する」と述べている。
しかし、US版ARTnewsのアレックス・グリーンバーガーが先月の論説で指摘したように、真に中立な美術展は存在しない。国連やオリンピックなど他の主要な国際機関と同様に、ビエンナーレも紛争を調停する倫理委員会を設置すべき時期に来ているのではないかという議論も浮上している。
ロシア館のプログラムは、「木は空に根を下ろす(The tree is rooted in the sky)」というテーマのもと、ロシア国内外の音楽家、詩人、アーティストら50人以上による分野横断的な内容が予定されている。主催者は本プロジェクトについて、文化が政治を超え得ることを示す試みだと説明し、先月のUS版ARTnewsの取材に対して次のように語っている。
「このプロジェクトは、異なる文化の出会いを通じ、ローカルな根がグローバルなビジョンと交差し、新たな芸術的視点を生み出して国際的なコミュニティの感覚を育む——そうした対話と交流の空間を創り出すことを目指しています」
ロシアに加え、イスラエル、イラン、アメリカなど複数の国が紛争に関与するなか、今年のヴェネチア・ビエンナーレは、国際美術展であると同時に、各国の立場が交錯する地政学的な舞台としての様相を強めている。(翻訳:編集部)
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