エジプトで「他に類を見ない」水の神殿を発見。幻の古代神や文明の交流を解明する貴重な手がかりに

エジプト北部のシナイ半島で行われている考古学調査で、巨大な水盤のある神殿が見つかった。エジプトと他の古代文明の交流を示す類いまれな特徴を備えた建築で、ほとんど文献が存在しない幻の神について知る手がかりとなることも期待されている。

エジプトのテル・エル・ファラマで、2世紀に建造された神殿が出土した。Photo: Courtesy Egyptian Ministry of Tourism and Antiquities

エジプト考古学調査団が、古代都市ペルシウムの神殿遺跡がシナイ半島のテル・エル・ファラマで出土したと発表した。発掘調査はエジプト考古最高評議会の監督下で行われている。

発見された建造物群の中には直径約35メートルの円形の水盤があり、かつてはナイル川最東端の支流(現在は干上がっている)と繋がっていた。水で満たされていたであろう池の周囲には複雑な排水路網が張り巡らされ、中央にはこの地で信仰されていた神、ペルシウスの像が据えられていたと見られる四角い台座がある。

遺跡の一部が初めて見つかったのは2019年で、長椅子のあるグレコローマン様式の建築物が発掘された。当初は議場だと考えられていたが、その後の継続的な発掘調査と建築様式の比較研究によって建造の目的に対する見方が変わってきたという。発掘調査を率いる海洋考古学・シナイ地域中央部門の責任者、ヒシャム・フセイン博士は声明でこう述べている。

「これは聖なる水を用いて宗教儀式を行うための施設であり、政治的な用途の建造物ではないことが分かっています」

上空から見たペルシウムの神殿遺跡の円形水盤。Photo: Courtesy Egyptian Ministry of Tourism and Antiquities

地層分析からすると、この神殿が建造されたのは2世紀で、6世紀まで使用されていたと考えられる。また、建築物には古代エジプト古代ギリシャ古代ローマの意匠が見られる。これは、マケドニアのアレクサンドロス大王による紀元前332年のエジプト征服以降、紀元前30年のプトレマイオス朝滅亡から西暦642年のイスラム勢力によるエジプト征服までローマ・ビザンツ帝国の支配下にあったエジプト建築の特徴だとされる。

ペルシウムは紀元前800年頃、地中海や紅海とナイル川デルタの湿地帯に挟まれた土地に築かれた。アジアとの境に位置する古代エジプトの軍事・通商の拠点として重要な位置を占め、のちにローマ帝国属州の都となっている。

ペルシウムという名はペルシウス神に由来するが、帝政ローマ時代のギリシャ人歴史家プルタルコスが著した『倫理論集』の「イシスとオシリス」の項でイシスと関わりのある子供として言及されている以外、この神についてはほとんど分かっていない。エジプト学者のスティーブ・ハーベイは、アートニュースペーパー紙の取材で次のように答えている。

「発見されたローマ時代の宗教施設がこの都市の守護神であったペルシウスに捧げられたものだと確認できれば、古典文献にしか記されていない神に捧げられた神殿が存在していたことを示す驚くべき事例となるでしょう」(翻訳:石井佳子)

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