「ヨーロッパでも類を見ない」2400年前の剣を発見! 権力の証の華麗な模様もくっきり

フランスのクレウジエ=ル=ヌフで行われた発掘調査でケルト人の集団墓地「ネクロポリス」が見つかり、そこからヨーロッパでも類を見ないほど保存状態が良い2400年前の2本の剣が出土した。

クレウジエ=ル=ヌフ遺跡から見つかった短剣。Photo: Facebook/@Inrap

フランス・ヴィシーから北に約9キロの小村、クレウジエ=ル=ヌフでの発掘調査で第2鉄器時代(紀元前450年-紀元前52年)にあたるケルト人の集団墓地「ネクロポリス」が見つかり、そこから2本の剣を含む多数の副葬品が出土したとLIVE SCIENCEが伝えた。

発掘調査を行ったのはフランス国立予防考古学研究所(INRAP)で、ネクロポリスを発見したのは2022年。それから数年かけての綿密な調査・保存作業を経て発表に至った。ネクロポリスは約650平方メートルで、100以上の墓があった。強い酸性の土壌のため遺骨は土に還っていたものの、墓の半数からは宝飾品を含む金属の装飾品が見つかった。最も多かったのは様々なデザインの銅合金の腕輪で、18個の帯どめもあった。そのうちの紀元前4世紀末から3世紀初頭にかけて作られたものは、模様が浮き彫りされた金メッキの土台に、研磨された宝石が飾られていた。

クレウジエ=ル=ヌフ遺跡から見つかった短剣。Photo: Facebook/@Inrap
クレウジエ=ル=ヌフ遺跡発掘の様子。Photo: Facebook/@Inrap
クレウジエ=ル=ヌフ遺跡から見つかった腕輪。Photo: Facebook/@Inrap

今回の発見で最も注目すべきものは、別々の墓から出土した「ヨーロッパでも類例が少なく」保存状態の良い短剣と長剣だった。剣はいずれもオリジナルの鞘に収まったままの状態で、短剣の鞘の縁には複数の研磨された宝石が飾られ、豊かな巻き模様と卍章が施されていた。卍章は現在ナチス政権と結びついたものになっているが、古代においては地中海地域で広く使用されていた。今回の調査を率いるINRAPの考古学者ヴァンサン・ジョルジュはLIVE SCIENCEの取材に対して、卍章は紀元前5世紀末から4世紀にかけてヨーロッパ本土のケルト人によって独自の用途のために取り入れられたが、その重要性は不明だと話す。さらに短剣をX線分析したところ、刃の上部に円と三日月が線で分けられている文様が確認できたことから、剣は紀元前4世紀初頭に作られたことが分かったという。

長剣は、鞘に腰のベルトに取り付けるための吊り輪が残っていた。剣の鞘には眼状の模様があったが豪華な装飾が見当たらないため、ジョルジュは騎乗者が使用した実用的なものだったと推測する。それに対して短剣の方は装飾性が高く、軍事指揮を含む権力の象徴として使用されたと考えている。

ジョルジュはこの短剣について、「ケルト人が北イタリアに侵入し、紀元前387年にローマを略奪した時期とほぼ同時代のものですが、現時点ではこれ以上のことは言えません」と話した。クレウジエ=ル=ヌフ遺跡での引き続きの調査は、その時代のケルト人の社会動態と儀式実践を理解する上で重要な役割を果たすことになるだろう。

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