漁港跡から中世の難破船の船底がそのまま出土! スペイン交易の歴史を知る貴重な史料に

スペイン・バルセロナで建設工事中に漁港の遺跡が見つかり、その海底部分から非常に保存状態の良い中世の難破船が見つかった。

難破船の調査をする研究チーム。Photo: Facebook/@Universitat Pompeu Fabra - Barcelona

スペイン・バルセロナのシウタデリャ地区で新しい生物医学センターの建設工事中に、旧港と人工の石造りの岸壁からなる魚市場跡が見つかり、港付近から中世の難破船が発見された。

エルサレム・ポスト紙が報じるところによると、難破船が発見されたのは海面下5メートル以上の場所であり、15世紀か16世紀に嵐で沈没したと考えられている。船があった地域は地下水で満たされていたため、非常に保存状態が良好だった。研究者たちが「シウタデラI号」と名付けた船は全長10メートル、幅3メートル。中世後期の地中海の船に見られるスケルトン構造で、湾曲した木製の肋骨と板をダボと鉄釘で固定していた。

また、船からはヘーゼルナッツの種や松ぼっくりなどの有機遺物も見つかった。これらは船の年代測定に役立つと同時に、中世の交易についての手がかりを与えてくれる可能性がある。そのほか難破船の位置は、500年前にバルセロナの海岸があった場所を知る手掛かりとなる。

現在のバルセロナの海岸。Photo: Getty Images

バルセロナで難破船が発見されたのは、これが初めてではない。2008年にはエスタシオ・デ・フランサの近くで、工事中に15世紀の商船「バルセロネータI」が発見されている。 この2隻の調査結果を合わせると、バルセロナが中世後期の主要な商業拠点だったことについて、より理解を深められることだろう。

「シウタデラI号」は何世紀も地下水に浸っていたため壊れやすく、腐敗を避けるために湿った状態を保たなければならない。考古学者たちは現在、船を長期保存するために慎重に解体し、さらにそれぞれの破片に脱塩処理と安定化処理を施している。シウタデラI号が見つかった7000平方メートルの遺跡は、まだ10〜15パーセントが調査されておらず、さらなる発見が期待されている。(翻訳:編集部)

from ARTnews

あわせて読みたい