巨匠カナレット「奇想画」の素描を新発見。予想落札価格1250万円で競売へ

ヴェネチアの都市景観で知られる18世紀の巨匠、カナレットの未知の素描が、10月21日にイギリスで競売にかけられる。約200年にわたり一族に受け継がれてきた作品で、予想落札価格は5万3000〜7万9000ドル(約840万〜1250万円)。

マラムズに出品される、カナレットの素描。Photo: Courtesy Mallams

18世紀イタリアの画家・版画家カナレット(1697–1768)による、これまで知られていなかった素描が、10月21日にイギリス・オックスフォードの競売会社マラムズに出品される。予想落札価格は5万3000〜7万9000ドル(約840万〜1250万円)だ。

カナレット研究の専門家チャールズ・ベディントンが真作と認めたこの素描は、カナレットがイングランドで活動していた1746〜1755年に制作されたとみられる。ペンと褐色のインクで描かれた、架空の建築風景を表す「カプリッチョ(奇想画)」に属する作品だ。

画面には、荒廃したルネサンス様式のアーケードが繊細に描かれている。崩れかけた石造部分にはつる植物や木々が生い茂り、粗末な木橋は丸太で辛うじて支えられているようにも見える。アーチの下からは船頭が操る小舟が現れ、手前の土砂が堆積した岸辺には、打ち捨てられた車輪や木の板が配されている。

裏面の書き込みからは、カナレットがこの素描を誰かに贈った可能性がうかがえる。その後、18世紀後半にイングランドの著名な作曲家・音楽史家チャールズ・バーニーが入手し、子孫に受け継がれてきたと考えられている。

また、同じ構図の絵画を制作する前に、依頼主となり得る人物に構想を示すために描かれた可能性もある。アートネットによると、関連する絵画が最後に競売に登場したのは1995年。ロンドンのクリスティーズで、38万ポンド(現在の為替で約8000万円、以下同)で落札されたという。

カナレットといえば、ヴェネチアの運河や壮麗な建築を描いた都市景観画で知られるが、1730年代後半にはカプリッチョの制作にも取り組み始めていた。このジャンルでは、実在する建築と想像上の建築を自在に組み合わせることができる。カナレットは古典的な廃墟や水路、人物を配し、緻密で幻想的な風景を生み出した。

美術史家ジョン・ロルフはアートネットの取材に対し、こうした作品にはカナレットの観察力と想像力の双方が表れていると説明する。制作の背景としては、当時高まっていた廃墟への憧れ、ヨーロッパ大陸での戦争に伴うヴェネチアの観光客減少、あるいは舞台美術家だった父のもとで働いた若い頃の経験が影響した可能性を挙げている。

近年、カナレットの代表的な絵画は競売で高額落札が相次いでいる。2025年7月には、ヴェネチアの祭礼を描いた《Venice, the Return of the Bucintoro on Ascension Day》がクリスティーズ・ロンドンで約4400万ドル(約69億6000万円)で落札され、作家の競売最高額を更新した。同様のモチーフの別の絵画も、2026年2月に3050万ドル(約48億2400万円)で落札されている。

カプリッチョに限った競売最高額は、1994年にクリスティーズ・ロンドンで記録された330万ドル(約5億2200万円)だ。今回の素描は、こうした絵画に比べると手が届きやすい価格に設定されている。ヴェネチアを代表する画家の作品を手に入れる、貴重な機会となりそうだ。(翻訳:編集部)

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