ポロック《Number 7A》が約286億円で新記録──10分間の激戦、史上最高額級の一作に

ジャクソン・ポロッの大型ドリップ・ペインティング《Number 7A》が、クリスティーズで1億8120万ドル(約286億円)で落札され、作家のオークション記録を更新した。10分間に及ぶ白熱の入札戦の末に決着した本作は、来歴・規模ともに際立つ重要作だ。

Auctioneer Adrien Meyer sells Jackson Pollock's Number 7A, 1948 the top lot of Masterpieces: The Private Collection of S.I. Newhouse, for $181.2 million
オークショニアのアドリアン・マイヤー(Adrien Meyer)の進行のもと、ジャクソン・ポロック《ナンバー7A、1948年》が1億8120万ドル(約286億円)で落札された。Photo: Courtesy Chritstie's

メディア界の大物であり世界有数のアートコレクターのひとりでもあったS・I・ニューハウス(S. I. Newhouse)の旧蔵品であるジャクソン・ポロックの大型ドリップ・ペインティング《ナンバー7A(Number 7A)》(1948年)が、5月18日夜にクリスティーズで開催されたオークション「Masterpieces: The Private Collection of S.I. Newhouse(マスターピース:S・I・ニューハウス・プライベート・コレクション)」で、1億5700万ドル(最新の為替レートで約250億円、以下同)で落札(ハンマープライス)された。手数料込みの総額は1億8120万ドル(約286億円)に達し、同作家のオークション記録を更新。本作は、公式のオークション落札作品の中でも最も高額な部類に入ることとなった。

本作は8200万ドル(約130億円)から入札が始まり、3人のスペシャリストを通じた電話入札者と会場内の2人、計5者以上による60回超の入札が交わされた。約10分間にわたる白熱した競り合いの末、オークショニアのアドリアン・マイヤー(Adrien Meyer)がほとんどささやくような声で100万ドル刻みの入札を読み上げる中、最終的に1億5700万ドルで落札。勝者は、クリスティーズ・グローバル・プレジデントのアレックス・ロッターが電話で代理した買い手だった。

会場でARTnewsのために取材していたジュリー・ブレナー・ダヴィッチによると、競り負けた入札者のひとりはスイスの大手ディーラー、イワン・ワースで、大コレクターのローレン・パウエル・ジョブズのために入札していた可能性もあるという。ただし、ロッターが誰を代理していたのかは明らかにされていない。

《ナンバー7A》は、事前に要問い合わせで1億ドル(約159億円)の予想価格が設定されており、作家のこれまでの最高額を大きく上回る水準に位置づけられていた。2021年には、《ナンバー17、1951(Number 17, 1951)》がサザビーズ・ニューヨークで、最高予想落札額3500万ドル(約56億円)の約1.7倍にあたる6100万ドル(約97億円)で落札されている。《ナンバー17》が一辺約5フィート(約149センチメートル)の正方形であるのに対し、今回クリスティーズに出品された《ナンバー7A》は、全長約11フィート(約334センチメートル)と大幅に大きい。いずれも油彩およびエナメルによるキャンバス作品で、主に黒を基調とした構成が特徴だ。

ポロック作品の次点の落札記録は、2013年の《ナンバー19(Number 19)》(5800万ドル=約92億円)、2018年の《コンポジション・ウィズ・レッド・ストロークス(Composition with Red Strokes)》(5540万ドル=約88億円)、2022年の《ナンバー31(Number 31)》(5400万ドル=約86億円)で、いずれもクリスティーズ・ニューヨークで記録されたもの。

クリスティーズによれば、現存する個人所有のドリップ・ペインティングとして最大の作品である点に加え、《ナンバー7A》はその来歴の確かさでも際立っている。同作は、美術品の購入に総額7億ドル(約1100億円)を費やしたとも言われる故ニューハウスと妻ヴィクトリアのコレクションに属しており、夫妻はいずれもUS版ARTnewsのトップ200コレクターに常連として名を連ねていた。ニューハウスは2017年に死去し、遺族は本作の行く末を決めるにあたり、かつてサザビーズの主席オークショニアを務めたアートアドバイザーのトビアス・マイヤーに助言を求めたと、ニューヨーク・タイムズは報じている

クリスティーズが発表した声明の中で、マイヤーはニューハウスを「最も目利きのコレクター」と評し、「自らのコレクションを大胆に編集することを恐れなかった。最も重要なアーティストによる最も重要な作品を所有し、時に売却し、また買い戻しながら、長年の研究と厳密さをもって比類なきコレクションを築き上げた」と述べた。

なお、本作はニューハウス以前には写真家のハーバート・マター(Herbert Matter)が所有しており、ポロックから贈られたものであった。その後、コレクターのキミコ&ジョン・パワーズ(Kimiko and John Powers)の手に渡り、さらにサザビーズの元オーナーであるA・アルフレッド・ターブマン(A. Alfred Taubman)を経て、2000年にニューハウスがプライベートセールで購入した。公に展示されたのは、1977年にホイットニー美術館で公開されたのが最後となっている。(翻訳:編集部)

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