村上隆とNFTの生みの親たちがウェビー賞を受賞
「卓越したインターネット上の活動」を表彰するウェビー賞(Webby Awards)は今年、複数のNFTプロジェクトに賞を授与した。ウェビー賞でアート関連の受賞者が出るのは異例のことだ。
アーティストの村上隆は、NFTプロジェクトによるインターネット界への貢献が評価され、ウェビー特別功労賞を受賞。NFTの生みの親であるアニル・ダッシュとケビン・マッコイにはウェビー生涯功労賞が贈られた。
ARTnewsのインタビューに応じたマッコイは、「自分たちの仕事が評価されたことに、驚きと喜びを感じています」と語っている。
ダッシュとマッコイが現在のNFT(非代替性トークン)の基礎となる技術を最初に発表したのは、2014年。アーティストと技術者が協力して、斬新な作品をスピーディに発明することを目的にしたカンファレンスプログラム「Seven on Seven(セブン・オン・セブン)」でのことだった。その時マッコイが目指したのは、デジタルクリエイターが作品の代金を直接受け取れる仕組みを作ることだった。
さほど規模の大きくないカンファレンスプログラムで何年も前に発表したアイデアが、世界的に影響力を持つほどになると、本人たちは想像していただろうか。
マッコイは次のように語っている。「当時も、重要でスケールの大きなアイデアだとは思っていました。でも、想像が現実になったとき、これほどまでに巨大なものになるというのは予想外の出来事でした」
画家や彫刻家として世界的に知られている村上は、NFTの分野でも2つのプロジェクトを手がけている。現在はナイキの傘下にある、デジタル・ブランドRTFKTスタジオとのコラボレーション「クローンX(CloneX)」がその一つ。メタバースで使うアイテムを販売する同社と製作した、この2万点のNFTシリーズは大成功を収めている。アニメ風の大きな目を持つ3Dアバターで、1点ごとに異なるアクセサリーの組み合わせと個性を備えている。
アバターのデザインには、村上作品でおなじみの絵柄を引用したものもあり、中には村上隆本人をモデルにしたものもある。これに加え、村上はNFTコレクションを発表した。彼の作品によく登場する笑顔の花をモチーフにした「Murakami.Flowers(ムラカミ・フラワーズ)」だ。
ウェビー賞は、声明の中で次のように述べている。「村上氏はインターネットによってアートを一般市民のものにできると信じている。彼は今、NFTアートとメタバースを通じて、その信念を実証しているのです」
ウェビー賞は、インターネット上で活躍する優れたイノベーターやクリエイターを称えるために1996年に創設された。グライムスやタンブラー(Tumblr)の創業者デビッド・カープ、ツイッターの創業者ビズ・ストーンなどをメンバーとする国際デジタル芸術科学アカデミー(International Academy of Digital Arts and Sciences)によって、ウェブサイト、アプリ、ゲームなどのカテゴリーごとに受賞者が選ばれる。
かつてはニューヨーク近代美術館も受賞を果たしている。アート界やその他の分野のゲストによるリクエストにアマチュア写真家が答えるプロジェクト「MoMA Photo Club(MoMAフォトクラブ)」で、最優秀コンテンツ・シリーズ賞に選ばれたのだ。(翻訳:野澤朋代)
※本記事は、米国版ARTnewsに2022年4月27日に掲載されました。元記事はこちら。
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