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  • 2022.03.22

ニューヨーク・アートウィークが5月に初開催。フェア、美術館、オークションハウスなどが結集

世界的なアートフェアが開催される都市では、フェアの時期に合わせ、街中のギャラリーや美術館、非営利団体などのアート関連スペースが参加する公式イベントが開かれることが多い。街を訪れる人々に、とっておきの企画や作品を見せる良い機会だからだ。

ニューヨーク・アートウィークは2022年5月に開催 Photo NDZ/STAR MAX/IPxニューヨーク・アートウィークは2022年5月に開催 Photo NDZ/STAR MAX/IPx

これまでニューヨークでは、こうした取り組みは行われてこなかったが、今年5月に初のニューヨーク・アートウィークが実施されることになった。5月に開催される4つのアートフェア、「インディペンデント」「TEFAF(The European Fine Art Fair)ニューヨーク」「NADA(New Art Dealers Alliance)ニューヨーク」「フューチャー・フェア」に合わせ、20以上のアート団体が結集する。

インディペンデントの創設者兼CEOのエリザベス・ディーは、インタビューで次のように述べている。「フリーズ開催中のロンドンのように、他の都市には成功モデルがたくさんあるけれど、ニューヨークで同様の試みがうまくいった例はなかったんです」

5月5日〜12日まで行われるこの新しい共同プロジェクトの主な目的は、参加団体の展示物を一覧できるようにすること。アートウィークのウェブサイトには今後、地図の他に、トーク、パネルディスカッション、ツアーなどの特別プログラムの情報が掲載される予定だ。

このイベントは、ニューヨークにおける新たなコラボレーションの形として構想されている。2018年以来のフェア開催となるNADAニューヨークは、これまでドイツのアート・ケルンなどのフェアと協業したことがある。

NADAのエグゼクティブディレクター、ヘザー・ハブスは、「ニューヨークにいる皆が力を合わせ、この時期を盛り上げていこうというのは、理にかなったことじゃないでしょうか」と言う。「他にも面白いことが起きているのに、知らん顔して自分たちのアピールだけをするより、訪れた人に少しでも多くの催しに触れてもらいたいですよね」

初のニューヨーク・アートウィークには、4つのフェア以外にも、世界三大オークションハウスのクリスティーズ、サザビーズ、フィリップスが加わるほか、メトロポリタン美術館、ハーレムスタジオ美術館、ホイットニー美術館、グッゲンハイム美術館、クイーンズ美術館、ブルックリン美術館なども参加する。

その他の参加団体には、ドローイングセンター、ニューミュージアム、スイスインスティテュート、ホワイトコラムズ、そしてARTnewsトップ200コレクターの一人、ロンティ・エバースが昨年ブルックリンに設立したアーティストレジデンス兼展示スペースのアマント(Amant)も参加する。

5月にジャン=ミシェル・バスキアの絵画《Untitled(Devil)(無題〈悪魔〉)》を競売にかける(予想落札価格は7000万ドル)フィリップスにとって、ニューヨーク・アートウィークは、「同業者が集まることで目に見える規模を作って盛り上げていく」良い機会だと、同社のアメリカ地域副会長兼事業開発責任者のビビアン・ファイファーは述べている。「皆で一丸となることで、エキサイティングなプログラムを5月にアートファンに提供できる。そう考えるようになったのは、アートフェア、オークションハウス、美術館の成熟の証だと思います」

ブルックリンのアートスペース、アマントでは、ブラジル人アーティストのカルラ・ザッカニーニの米国初の個展が開かれる。ザッカニーニは、ラテンアメリカにおける強制移動と分断をテーマにしたインスタレーション、彫刻、パフォーマンス、ドローイングを制作している。同スペースの芸術監督、ルース・エステベスは、アマントの広々としたギャラリーと屋外スペースは、ニューヨーク・アートウィークに来た人々が「フェアの喧騒から離れ、ほっと一息つける場となる」だろうと語る。「アーティストにとって、ニューヨークがいつまでも魅力を失わないのは、新しいことを受け入れ、絶えず自らを更新し続けているから。ニューヨーク・アートウィークも、そうした新しい要素の一つです」

ブルックリンからさらに足を伸ばし、クイーンズ美術館に行くと、クリスティーン・ソン・キムの新作や、ニューヨークの美術館では初となるスザンヌ・レイシーの回顧展などが見られる。同美術館のディレクター、サリー・タラントは、次のように述べている。「自分たちは、多種多様な文化が集まるニューヨークの文化的生態系の一部であると考えています。私たちがその生態系に不可欠であると同時に、私たちにとってもその生態系は不可欠なもの。アートウィークの話がきた時、ぜひ同業者とともにコミュニティを活気づけたいと思いました」

ニューヨーク・アートウィークは、昨年11月に行われた50人の会議でイベントの日程やミッションなどの大枠が決められた。そこから、各メンバーがさまざまな委員会を立ち上げ、12月からは定期的に会合を開きながらプロジェクトを推進してきた。

インディペンデントのディーは、コラボレーションのための機が熟したと語る。「皆の足並みが揃い、集中して一つのことに取り組めるこの状況を活かそうという機運が盛り上がっています。大事なのはニューヨークというブランドのもとに集まることであって、個別のアートフェアのブランディングが成功するかどうかという問題ではありません」。

クイーンズ美術館のタラントも、それに同意する。「この文化的生態系を強化するプロジェクトに、ぜひ関わりたいと思いました。今の時代、私たちは互いに支え合わねばなりません。ニューヨークは過去も現在も、そして将来も、すばらしい文化都市であり続けるはず。そうした力を復活させるには、すでに存在するつながりを深め、強化する必要があるのです」(翻訳:野澤朋代)

※本記事は、米国版ARTnewsに2022年3月8日に掲載されました。元記事はこちら

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