松岡正剛 連載「ARS & HODOS アート着脱自在ヱ門」
「千夜千冊」を手がける編集工学者・松岡正剛が自らを「着脱自在ヱ門」と名のり、鮮やかに、時に怪しく、様々なものを自在に着脱する。本阿弥光悦や北大路魯山人から各界のアーティスト・クリエイター・職人までを紹介・対談・セッションするという、前代未聞のクロスオーバーな連載に挑みます!(企画協力:株式会社百間 和泉佳奈子)

〜はじめに〜 面影の正体と出会いたい

Mar 31, 2022
STORY
松岡正剛

いまやアートは「好き勝手」の同意語になっているように感じられるかもしれないが、とはいえ原発の部品やお菓子のナボナやガリアーノの布地の切れっぱしが、そのままアートになるわけではない。アート作品には有名無名のアーティストたちが拘(かか)わっていて、そのどこかに作為とデュシャンの芸術係数とアートワールドに対する配慮と挑戦とが大なり小なり絡まってきた。だから値段もついてきた。

アートのフォーマットはショーヴェの洞窟の暗闇、神話の擬(もど)き、陶淵明や王維の山水詩、教会祭壇の構造、寝殿や書院の間仕切り、ルネサンス城館の窓枠などから生まれ、そこにありとあらゆる線分と色付きオブジェと肖像と構成趣味とがコンテンツとして住みこんだ。住みこんだのではあるが、その四角い枠組(タブロー)にアートはじっとしていられなかった。

すぐさまアートがアートを呑み込み、アートがアートを弾(はじ)き、アートとアートが相殺しあったのである。

この連載で、私はしばらく少々お節介な見物人を任じてみたいと思う。そこで「着脱自在ヱ門」を名のることにした。気になるアート作品やアーティストに出会って、何かを着けたり脱いだりするお手伝いをしようと思うのだ。その何かというのは、おそらく「面影の正体」というものだ。

私はすべてのアートは古来より今日にいたるまで「アルス・コンビナトリア」の変奏だろうとみなしてきた。技芸(アルス)の切磋琢磨と組み合わせが、それぞれの時代と人々とさまざまな地域の中でなんらかの方途(ホドス)として受け入れられて、独特のアートに変身していったのだろうと見ているのだ。

では、そのそれぞれのアートに秘匿されてきたものは何かといえば、それがさしずめ「面影」というものなのである。着脱自在ヱ門はこの連載で、面影ブラウザーのお役目を頂戴する。

松岡正剛
編集工学者

1944年生まれ。日本文化、芸術、生命哲学、システム工学など、多方面におよぶ思索を情報文化技術に応用する「編集工学」を確立。また、日本文化研究の第一人者として「日本という方法」を提唱。私塾・サロンを開催し各界のクリエイターや経済人に多大な影響を与える。2000年にスタートした「Web 千夜千冊」は、あらゆる編集技法を駆使した実験的な書評として定評がある。現在1800夜を超え、紹介書籍は延べ2万冊以上。プロジェクトに、平安遷都1200年記念事業、平城遷都1300年記念事業、図書街、目次録、書店「松丸本舗」、帝京大学「共読ライブラリー」、近畿大学「アカデミックシアター」、無印良品「MUJIBOOKS」、角川武蔵野ミュージアム「エディットタウン」、NIKIギャラリー「册」、鉄道芸術祭、銀座「MIRROR展」など。書籍は『知の編集術』『日本文化の核心』『擬』、シリーズ『千夜千冊エディション』ほか多数。編集工学研究所所長、イシス編集学校校長、角川武蔵野ミュージアム館長、百間所属。

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