協賛企業から見るアート・バーゼル・パリ。金融、テック、プライベートジェット、ファッションetc.

10月20日、好評のうちに終幕したアートバーゼル・パリ。同フェアでは様々な企業がパートナーとして関わり、協力関係を築いていた。同フェアが発表した報告資料から、その実施例を紹介する。

2024年のアート・バーゼル・パリ展示風景。Photo: Courtesy of Art Basel

10月18日から20日までパリ・グランパレを舞台に初開催された「アートバーゼル・パリ」。今回は、前年にグラン・パレ・エフェメールで開催した「Paris+」の27%増となる195ギャラリーが参加。うち65ギャラリーはフランス国内に拠点を構え、53ギャラリーが初出展だった。10月16日に開催されたVIPプレビューでは、各ギャラリーから大口販売の報告が続出するなど売り上げも好調だったようだ。同フェアの花形はギャラリーによる作品販売だが、企業とフェアの効果的な協力関係も注目に値する。アート・バーゼル・パリではどのような企業が、どのような形で関わったのだろうか。同フェアが発表した報告資料から実施例を紹介しよう。

「安らぎの場」を提供

同フェアでは、長年アート・バーゼルのグローバルリードパートナーを務めるUBSと、プライベートジェットを提供する企業のネットジェッツ(Net Jets)がそれぞれVIPラウンジを運営した。ラウンジ内では、UBSは自社のアートコレクション、ネットジェッツはフランス人アーティスト、シルヴェール・ジャロッソンの作品を展示した。また、アートフェアの常連オフィシャル・シャンパン・プロバイダーのルイナール(Ruinart)はバーを設け、カメルーン人アーティスト、パスカル・マルタン・タイユの個展を開催。日本にも支店があるカフェチェーンのイリーカフェ(Illycaffè)は、4人の女性アーティストがデザインしたカップでコーヒーを提供するパブリックスペースを展開した。

2024年のアート・バーゼル・パリ、Paceのブース。Photo: Courtesy of Art Basel

アートを通してレガシーを伝える

今年初めてホストパートナーとして参加した世界的な家電メーカーのTCLは同社製品の中でも最大級かつ最新鋭の115インチモニターを会場に置き、「明日のアーティストたちにインスピレーションを」というテーマのもと没入型のアート体験を提供した。またルイ・ヴィトンは自身が運営する美術館「フォンダシオン ルイ・ヴィトン」の設立10周年を祝い、同館を手掛けた建築家フランク・ゲーリーの特設ブースを設置。全長4メートル50センチの、ゲーリーの代表作とも言える魚の形をした彫刻を展示した。

アートの裾野を広げる新たな試み

アート・バーゼルは、初となるコンセプトストア、「アートバーゼル・ショップ」を会場にオープンさせた。同店はパリの伝説的セレクトショップ「コレット」の元クリエイティブディレクター、サラ・アンデルマンとのキュレーションのもと、アートとファッション、デザインが交差する特別なプロダクトを展開。ザ・スケートルームによるジェフ・クーンズデザインの限定スケートデッキや、ユニクロとルーブル美術館×カミーユ・アンロによる特別コレクション、さらにパーリー・フォー・ジ・オーシャンズによる海洋プラスチックを活用したアーティストスカーフなど、ここでしか手に入らないアイテムを取り揃えた。アンデルマンは同店の使命について、「アートを昇華させることは重要ですが、アート界がいくつかの壁を取り払うことも不可欠です」と語った。また、老舗フレグランスメゾンのゲランは、アーティストのジュリー・ボーフィスとコラボレーションした限定フレグランスを「アートバーゼル・ショップ」でも販売するとともに、シャンゼリゼ通りのブティックで110周年を記念する現代アート展を開催した。

2024年のアート・バーゼル・パリ、マリアン・グッドマンギャラリーのブース。Photo: Courtesy of Art Basel

企業色を反映した多彩な展覧会

ミュウミュウは、パブリックプログラムのオフィシャルパートナーとして、市内のイエナ宮で、ポーランド出身のアーティスト、ゴシュカ・マキュガが企画し、エルヴィラ・ディアンガニ・オセの主唱による特別プロジェクト「Tales & Tellers」を展開した。これは同ブランドが2011年から続けている女性作家支援プロジェクト「Women's Tales」の一環。BMWはART MAKERSプログラムを通じて、フランス・モロッコのアーティスト、ムスタファ・アゼルアルとキュレーターのマルジョレーヌ・レヴィを支援。パリの有名デパート、ギャラリー・ラファイエットは、エマージェンス部門のオフィシャルパートナーとして新進アーティストの発掘と支援に注力し、カリフォルニアのスタートアップ企業ノーティラス(Nautilus)はユネスコとの共催で、人類と自然のレジリエンスをテーマとする3つの展覧会を実施した。

ユニフォームからVIPコンシェルジュまでサポート

ホスピタリティサービスも企業が協力している。例えばスイスの家具メーカー、ヴィトラ(Vitra)はコレクターズラウンジに家具を提供。ロサンゼルスの衣料品販売店ゴート(GOAT)は、アーティストのカンディス・ウィリアムズがデザインしたスタッフユニフォームを制作した。また高級コンシェルジュサービスで知られるクインテッセンシャリー(Quintessentially)は、VIP来場者向けのサポートを提供。ほか、ル・ロイヤル・モンソー(Le Royal Monceau)、シャングリラ・パリ(Raffles Paris)、クリヨン・ホテル(Hôtel de Crillon)などパリを代表する高級ホテルがオフィシャルパートナーとして参加している。

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