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ミュウミュウが「真実なき時代」をテーマに女性アーティストとコラボ。アート・バーゼル・パリにも参加

10月1日、パリ・イエナ宮でミウッチャ・プラダによるミュウミュウの2025年春夏コレクションが発表された。ランウェイショーのアートプロデュースは、ロンドンを拠点に活動するゴシュカ・マキュガが担当。会場を新聞の印刷工場に仕立て、「情報」に翻弄される現代人を示唆した。

ゴシュカ・マキュガミュウミュウのショーのために制作した新聞「The Truthless Times(真実なき時代)」。Photo: Screenshot via Instagram

2011年から、「女性たちの物語」と題した女性の映画監督とのコラボレーションプロジェクトを通じて、社会における女性のありようを様々な視点から問うてきたミュウミュウが、新プロジェクトを発表した。これは、今後13年間に渡ってブランドと先駆的な女性アーティストや映画監督たちとの文化的対話を行う試みで、虚栄心についての考察や、女性が自分自身をどのように見ているか、その視線の分析を試みるという。

その第一弾として、10月1日にパリのイエナ宮で開催された2025年春夏コレクションのランウェイショーで、アーティストのゴシュカ・マキュガとコラボレーションを行った。

ゴシュカ・マキュガは1967年にポーランドのワルシャワに生まれ、現在はロンドンを拠点に活動しているアーティストで、2008年のターナー賞にノミネートされた4人の候補者のうちの1人でもある。ジャカード織りのタペストリーから彫刻、ロボットまで様々なメディアで制作する彼女の作品は、展示される施設に根差したものが多いのも特徴だ。

マキュガは今回のミュウミュウのショーのために、「真実」「誤報」「情報操作」について考察するフィクションの短編映画と、それに連動した新聞「The Truthless Times(真実なき時代)」を制作。会場のイエナ宮をまるごと新聞の印刷工場に仕立て、その中に客席とランウェイを設けた。観客は、真実の概念を分析し解読するためのツールであると同時に、現代の特徴である情報の氾濫も意味する「印刷機」を模したオブジェに囲まれながら、ショーを鑑賞するという演出だ。

コレクションに付けられた「Salt Looks Like Sugar(塩は砂糖に似ている)」という名前も示唆的だ。コレクションは、ひざ丈のシンプルなドレスにゆったりとしたウィンドブレーカー、ピンヒールのパンプスにレッグウォーマー、トップスをぐるぐる巻きにしたようなチューブトップというようなルックが象徴するように、ハイとローなアイテムを組み合わせ、平凡な着こなしに「違和感」を与えることで絶妙に崩すことを意図されているように見えた。俳優のウィレム・デフォーやヒラリー・スワンク、カーラ・デルヴィーニュもモデルとして登場し、ショーの動画では時折、吊るされて会場を巡り続ける「The Truthless Times」が抜かれる。その見出しには「終わりなき終わり。未来が過去へと移り変わる」という言葉が綴られていた。

ミュウミュウの次なるアートとのコラボレーションは、パリのグランパレで開催される「アート・バーゼル・パリ」(10月18日〜20日)への参加だ。パブリックプログラムとして、同じくイエナ宮で、マキュガの企画、エルヴィラ・ディアンガニ・オセの主唱による特別プロジェクト「Tales & Tellers」を展開する。(翻訳:編集部)

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