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ディアドル&ジェームズ・ダイソン(Deirdre and James Dyson)

拠点:イギリス・グロスターシャー
職業:家電機器(ダイソン)
収集分野:イギリスのポップアートを中心とした近現代アート

家電の中でも高級品とされるダイソン。その創業者夫妻が、ブリティッシュポップアートを核とした膨大な数のアートをコレクションしていても不思議はないだろう。所有作品には、ピーター・ブレイク、アレン・ジョーンズ、アンディ・ウォーホル、ロイ・リキテンスタイン、デイヴィッド・ホックニー、イヴ・クライン、パブロ・ピカソなど著名作家の彫刻や絵画が並ぶ。ロンドンのデザインミュージアムのチーフエグゼクティブで館長のティム・マーローは、そのコレクションを、「個人の趣味を反映した幅の広いもので、その底流には一貫性と上質さがある」と評価している。

2020年にダイソン夫妻は、コレクションの一部を一般公開すると発表し、大きな話題になった。当時、夫妻はイギリス・南グロスターシャーにアートギャラリーを開設しようと、自治体の認可を申請していた。18世紀に建てられた邸宅、ドディントンパークのある1.2平方キロメートルの敷地の一部を使い、2階建てのギャラリーを新たに設けるという。国際的に有名な設計事務所、ウィルキンソン・エアによる洗練された構造を持つドディントン・アート・ギャラリーは、2024年中のオープンを目指している。

ダイソン夫妻は、2人とも正式な美術教育を受けている。1966年、ロンドンのバイアム・ショー美術学校で知り合い、ジェームズはその後、ロイヤル・カレッジ・オブ・アートで学んだ。ダイソンの掃除機が洗練されたデザインなのは、こうした背景があるからだろう。一方のディアドルは、自らの絵画とカーペットデザインの仕事に関する著書『Walking on Art: Explorations in Carpet Design』を、2015年にテムズ&ハドソン社から出版(彼女の作品はニューヨークとロンドンで展示されたことがある)。ロンドンのヴィクトリア&アルバート博物館などで展示するためにカーペット制作を依頼されたこともあるディアドルは、2015年に英タイムズ紙にこう語った。

「カーペットをアートとして認識してもらえるようにしたいのです。なぜ、今はアートと思われないのでしょうか? なぜ、芸術家と職人は別のものになったのでしょうか? 歴史上の有名な芸術家の多くは職人でもありました。現代アートに欠けているのはそこだと思います」

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