ジェフリー・ガンドラック(Jeffrey Gundlach)
拠点:アメリカ・ロサンゼルス
職業:資産運用会社(ダブルライン・キャピタル)
収集分野:現代アート
ロサンゼルスを拠点とする著名ファンドマネージャーでコレクターのジェフリー・ガンドラック。彼は2019年、投資関連メディア、キプリンガーの取材に「私のコレクションはアメリカ国内最大級で、一流作品ばかりだ」と豪語している。ガンドラックが謙虚なタイプでないのは有名だが、アンディ・ウォーホル、ウィレム・デ・クーニング、アレクサンダー・カルダー、ドナルド・ジャッドなど、現代アートのビッグネームの作品を多数所有していることを考えれば、誇らしげに語るのは当然かもしれない。また、ニューヨーク州バッファローで育ったガンドラックは、生まれ故郷にあるオルブライト=ノックス美術館の大規模拡張工事にあたり、6500万ドル(約95億円)にのぼる多額の寄付を行った。2023年6月にリニューアルオープンした同館の新しい名称、バッファローAKG美術館のGはガンドラックのことを指している。
ガンドラックに名声と22億ドル(約3200億円)もの純資産をもたらしたのは、金融マーケットに対する鋭い洞察力だ。たとえば、住宅バブルが崩壊して金融危機が起きる前年の2007年に、サブプライムローンは「最悪以外の何ものでもない」と警告していたという。その才覚で彼は、自らの資産運用会社ダブルライン・キャピタルを、運用資産額1400億ドル(約20兆円)規模へと成長させている。
2012年にはサンタモニカの自宅に強盗が押し入り、1000万ドル(約14億6000万円)を超える美術品が盗まれて大きな話題になった。その中には、エンタテインメント界の大物でTOP 200 COLLECTORSの1人、デヴィッド・ゲフィンから入手したジャスパー・ジョーンズの《Green Target》も含まれていた。ガンドラックは当時、盗まれた作品を取り戻すための情報提供に報酬を提供するという広告を出している。報酬額は、ピエト・モンドリアンが100万ドル(約1億4600万円)、ジャスパー・ジョーンズが50万ドル(約7300万円)、その他が20万ドル(約2900万円)だった。
この事件は、まるで探偵小説のような展開でガンドラック自身が解決したと伝えられている。盗まれた絵画の中には、父方の祖母で、生涯に2点しかオークションに出品されなかった画家、ヘレン・フックスの作品があった。犯人が作品の価値を知るために彼女の名前をグーグル検索するのではないかと考えたガンドラックは、警察当局にフックスの名前を検索した人物の調査を依頼。その推理はズバリと当たり、犯人逮捕と盗まれた全美術品の回収につながった。
注:記事中の円換算額は、US版ARTnewsで2024年版トップ200コレクターズが発表された2024年10月時点の為替レートによる。