曹興誠(ロバート・ツァオ/Robert Tsao)
拠点:シンガポール
職業:半導体製造(聯華電子/ユナイテッド・マイクロエレクトロニクス)
収集分野:アジア美術・古美術
台湾テクノロジー界の雄、ユナイテッド・マイクロエレクトロニクス社の創業者兼会長である曹興誠(ロバート・ツァオ)がコレクションを始めたのは1990年代。以来、アジアの伝統美術や陶磁器などの一大コレクションを築いてきた。
2007年に香港のクリスティーズで、乾隆帝時代の筆壺を900万ドル(約13億円)で購入した曹は、アジア古美術の代表的コレクターと目されるようになる。そのコレクションは、新石器時代の良渚文化(紀元前3300~2000年頃)から、アジア、ヨーロッパ、アメリカなど世界各国の現代アートまで多岐にわたる。「古今東西を問わず、芸術作品に心を動かされるものがあれば、そこには共通点がある」と、彼は語っている。
曹の所蔵品の中でも特に有名なのは、2019年秋にサザビーズ香港のオークションで手に入れた乾隆帝時代のエナメルガラスの花瓶だ。当時サザビーズ・アジアのニコラス・チャウ会長は、この作品は「紫禁城で作られた中でも一流の作品で、個人の手に渡った清朝美術の最高峰であることは間違いない」と太鼓判を押した。ちなみに、曹が最初に購入した翡翠の作品は、後に偽物だと判明している。
近年、曹は台湾周辺地域の政治問題について発言することが多くなった。それは、2019年に香港で起きた弾圧を目の当たりにしたことが影響している。2022年には、中国による侵略のリスクに対し、台湾防衛のために9700万ドル(約140億円)の資金を確保することを明らかにした。
注:記事中の円換算額は、US版ARTnewsで2022年版トップ200コレクターズが発表された2022年10月時点の為替レートによる。