ジョセフ・ヴァスコヴィッツ、リサ・グッドマン(Josef Vascovitz and Lisa Goodman)
拠点:カナダ・シアトル
職業:不動産業、コンサルティング
収集分野:現代アート(主に、社会正義とジェンダーをテーマとしたアフリカン・ディアスポラとラテン系アーティストの作品)
「大きな富には大きな責任が伴う」というのが、ジョセフ・ヴァスコヴィッツとリサ・グッドマンの信条だ。ともにシアトル美術館(SAM)の理事を務める2人は、この信条に従い、同美術館に自分たちのコレクションから数多くの価値ある作品(主に有色人種のアーティストの作品)を寄贈している。
彼らがSAMに寄贈した中には、ニック・ケイヴが2006年に制作したサウンドスーツやシェリル・ポープの紙作品のほか、南アフリカのアーティスト、ウォルター・オルトマンの2007年の彫刻、著名写真家キャリー・メイ・ウィームスの「キッチンテーブル」シリーズなどがある。2015年、SAMの作品取得委員会のメンバーだったヴァスコヴィッツは、マシュー・オッフェンバッカーとジェニファー・ネムハウザーによるコンセプチュアル・アート作品《Deed of Gift》の入手に尽力。これは、美術館の永久所蔵品に女性やクィアのアーティストによる作品を増やす取り組みの一環だった。
現代アートの熱心なコレクターであるヴァスコヴィッツとグッドマンは、シアトル・アートフェアやフリーズ・ロサンゼルスなど、さまざまなアートフェアの常連でもある。ヴァスコヴィッツがコレクションに興味を持ち始めたのは、約30年前に南アフリカを訪れ、同国の活気ある現代アートシーンを知ったのがきっかけだった。しかし、本格的にコレクションを始めたのは、グッドマンと出会ってからだという。現在、2人で購入した作品は500点を超え、特にアフリカの現代アーティスト、アフリカからの移民の子孫であるアーティスト、有色人種のアーティストの収集に重点を置いている。
そのコレクションで特筆すべき作品には、ケヒンデ・ワイリーの《Young Man Holding a Skull》(2013)、エイミー・シェラルドの《Saint Woman》(2015)、トイン・オジ・オドゥトラの《In This Imperfect Present Moment》(2016)、そしてガーナ系ナイジェリア人アーティスト、エル・アナツイのアメリカでの初個展に出品された作品などがある。2019年に購入したベティ・サールの《Cage(In the Beginning)》(2006)は、この作家が鳥かごを使ったオブジェの制作を始めた頃の作品の1つで、2人は今後10年間SAMに貸し出すことを決めている。