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ジョーダン・シュニッツァー(Jordan Schnitzer)

拠点:アメリカ・オレゴン州ポートランド
職業:不動産業
収集分野:現代アート、戦後美術

ジョーダン・シュニッツァーは、世界最大級の版画とマルチプル作品のコレクションで知られる。所蔵作家には、アンディ・ウォーホル、ジャスパー・ジョーンズ、エルズワース・ケリー、ロイ・リキテンシュタイン、ルイーズ・ブルジョワ、デイヴィッド・ホックニー、アレックス・カッツ、エド・ルシェなど一流どころが名を連ね、ウォーホルだけでも1300点を超える作品をコレクションしている。

絵画、彫刻、陶磁器なども合わせると、所蔵品は2万点以上、作家は約1500人にのぼる。しかも、その収集ペースは落ちる気配がない。近年はジェフリー・ギブソン、カラ・ウォーカー、ジュリー・メレトゥ、ローナ・シンプソン、マリー・ワット、フン・リウ、ワンゲチ・ムトゥ、ロバート・コレスコットなど多様なアーティストの作品が加わったが、特にコレスコットについては30点もの絵画を所有している。

2023年に取得した2作品は、版画コレクションをさらに拡大しつつ、他のメディウムへと幅を広げるものだった。その1つは、キース・ヘリングの初めての版画作品《Bean Salad》(1977)(シュニッツァーは、既に50点のヘリング作品を所有している)。もう1点は、ハンク・ウィリス・トーマスがボストン市からの委託で制作し、2023年1月に除幕式が行われた高さ約6.7メートルのブロンズ像《The Embrace》だ。

そのほか、近年コレクションに加わった中には、ロバート・ラウシェンバーグ、ルイーズ・ニーヴェルスン、ヴァネッサ・ジャーマン、レオナルド・ドリュー、ケヒンデ・ワイリー、ジェフリー・ギブソン、ジョサイア・マケルヘニーの彫刻、クリストファー・マイヤーズのインスタレーション、アリソン・サールのテキスタイル作品、ブルース・ナウマンのネオン作品、ジム・ダインとミカリーン・トーマスのミクストメディアペインティングなどがある。

しかし、シュニッツァーのコレクションで最も価値があるのは、2021年に手に入れたジュディ・シカゴの版画アーカイブだろう。それ以来、フェミニストの先駆者であるシカゴが手がけた他のメディウムの作品にも対象を広げた彼は、今やシカゴに関する最大のコレクションオーナーとなっている。

これらのコレクションはシュニッツァーの故郷、オレゴン州ポートランドにある約4600平方メートルの保管施設に収められ、ジョーダン・シュニッツァー・ファミリー財団による管理の下、ポートランドのダウンタウンにある展示スペースや、アメリカ合衆国北西部にある3つの大学の美術館で見ることができる。過去20年間に財団が企画した展覧会は160以上、巡回した美術館は120カ所近い。シュニッツァーはまた、ポートランドで開催される新しいビエンナーレ「Converge 45」や、毎年開催される版画賞「IFPDA Jordan Schnitzer Award for Excellence in Printmaking」に資金を提供している。

シュニッツァーのコレクションへの情熱は母譲りかもしれない。彼が初めて作品を手に入れたのは1965年、買ったところは母親のアーリーンが経営するファウンテン・ギャラリー・オブ・アートだった。それはポートランドの画家、故ルイス・バンスが1965年に描いた小さな習作《Sanctuary》で、絵の裏には、「シュニッツァー・コレクションの最初の作品!」と書かれているとシュニッツァーは語る。

「何千点もの絵画、版画、彫刻、ビデオ、陶器、ガラス作品のコレクションを持つことができて幸せですが、《Sanctuary》はいつも私のそばにあり、毎日眺めています。母を思い出させるものでもあり、ポートランドのアート界の中心にいたルイス・バンスを思い出させるものでもあります。私は常々地元のアーティストを支援するのが重要だと口にしていますが、合衆国の北西部に暮らす私たちにとって、ルイス・バンスが身近にいてくれたのは幸運でした」

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