今週末に見たいアートイベントTOP5: 塩田千春、鴻池朋子らの作品から考える「生きる」ことと「幸せ」、佐々木類が東京で4年振りの個展

佐々木類「不在の記憶」(WALL_alternative)より

1. 「タグチアートコレクション×弘前れんが倉庫美術館 どうやってこの世界に生まれてきたの?」(弘前れんが倉庫美術館)

塩田千春《How did you come into the World?》2012年 タグチアートコレクション/タグチ現代芸術基金蔵 ©JASPAR, Tokyo, 2024 and Chiharu Shiota
ロック喫茶「JAIL HOUSE 33 1/3」再現展示 一般財団法人奈良美智財団蔵 弘前れんが倉庫美術館での展示風景 Photo: Keizo Kioku
マウリツィオ・カテラン《無題(エレベーター)》2001年 タグチアートコレクション/タグチ現代芸術基金蔵 弘前れんが倉庫美術館での展示風景 Courtesy of Maurizio Cattelan's Archive and Galerie Emmanuel Perrotin Photo: Keizo Kioku

アート作品から考える「生きる」ことと「幸せ」

現在、国内外の作家の約700点(2024年4月時点)に及ぶ多様な作品を有し、日本を代表する現代アートコレクションとして国際的に高い評価を受けているタグチアートコレクション。幅広いコレクションには、弘前れんが倉庫美術館やこの地に縁の深い作家の作品も多く含まれている。本展は弘前市出身の奈良美智や奈良と親交が深く当地でもかつて展示を行った杉戸洋、青森を含む東北にゆかりのある工藤麻紀子や鴻池朋子ら、当館の歴史や地域にゆかりのある作家と共に、国際的に活躍し、現代社会を反映する作品を制作する作家たちを紹介する。

そのほか展示作家は、詩的な旅のイメージの中に不穏な歴史が重なり合うトゥアン・アンドリュー・グエン、自分の身体を通じて世界と向き合う片山真理、そして本展のタイトルにもなった作品を制作した塩田千春。また、美術館を飛び出して高山明のプロジェクト《マクドナルドラジオ大学》を展開するなど、絵画や写真、映像やレクチャー型のパフォーマンスなど多彩な作品を通じて、生きることと幸せについて考える機会を提供する。

「タグチアートコレクション×弘前れんが倉庫美術館 どうやってこの世界に生まれてきたの?」
会期:2024年9月27日(金)~2025年3月9日(日)
場所:弘前れんが倉庫美術館(青森県弘前市吉野町2-1)
時間:9:00~17:00(入館は30分前まで)
休館日:火曜


2. 「夏のヘウレーカ!」(山口情報芸術センター[YCAM])

撮影:山中慎太郎(Qsyum!)

その道のプロが「自由研究」に本気で取り組む

表現を軸に活躍する「その道のプロ」である7つのチームが、小学校や中学校などで実施されている「夏休みの自由研究」に挑戦した成果を紹介する展覧会。児童・生徒の自律的な学びを尊重しようとする欧米発の教育運動「新教育運動」の流れを汲む「自由研究」の本質に立ち返りながら、現代における実験と探究の意義を問い直す。

東京を拠点に活躍するアーティスト・コレクティブSIDE COREや、京都を拠点とするフードラボFarmoon、山口大学教育学部附属山口中学校技術部など、現代美術や食、生物学など、さまざまな領域を横断的に活躍するグループが参加する。彼らの実験的な試みは、私たちの日常に潜む「探究」の可能性を示唆することだろう。

「夏のヘウレーカ!」
会期:2024年12月13日(金)~2025年5月18日(日)
場所:山口情報芸術センター[YCAM]コミュニティ・スペース、2Fギャラリー(山口県山口市中園町7-7)
時間:10:00~20:00
休館日:火曜(祝日の場合は翌日)


3. 桑田卓郎+く〈窯上げうどん〉(Gallery & Restaurant 舞台裏)

©︎ Atsushi Harata

桑田卓郎の器で「うどん」を食べるアート体験

岐阜県多治見市を拠点にするアーティスト、桑田卓郎は、多治見市の1300年以上続く美濃焼きの伝統を基盤としつつ、その造形に現代的な再解釈を加えた独自の表現で知られている。本展では、桑田が以前、釉薬を混ぜる為にうどんを捏ねる機械を取り入れたことをきっかけに、スタジオを訪れたゲストにうどんを振る舞うようになったことから着想している。

展覧会場には、代表作である梅花皮(表面の釉薬が縮れ、その下の素地が見えることで凸作られる凸凹模様を指す)の技法を用いた作品に加え、桑田が手掛ける手仕事のクラフトライン「く」による道具を展示する。そして会期中は、陶芸と調理の道具のイメージを重ね合わせるパフォーマンスとして、同スペースのシェフが桑田の作品で「うどん」(予約不要)と「フルコース」(要予約)を提供する(いずれも有料)。

桑田卓郎+く〈窯上げうどん〉
会期:1月25日(土)~3月16日(日)
場所:Gallery & Restaurant 舞台裏(東京都港区虎ノ門5-8-1 麻布台ヒルズ ガーデンプラザA B1F)
時間:11:00~20:00
休館日:月曜(祝日の場合は翌日)


4. 佐々木類「不在の記憶」(WALL_alternative)

佐々木類が「東京」をリサーチした新作を披露

佐々木類の、東京で4年振りとなる個展。佐々木は「存在の記録や保存に適した素材」としてガラスをとらえ、作品を制作する過程において植物などを採集し、透明なガラスに封入することで、目には見えない記憶の可視化を追求している。これまで北欧やアメリカを中心に海外でも制作活動し、国内外の美術館で展示を行ってきた。

本展では、佐々木が活動の拠点である金沢で採集した植物をモチーフにした「土地の記憶」シリーズや「忘れじの庭」シリーズ、部屋の隅を型取りした《隅》など20点以上が展示される。また新たな試みとして、佐々木がスタッフと共に同スペースがある西麻布と六本木周辺をリサーチし、その地の歴史やスタッフの記憶を辿りながら採集した植物を用いて制作した作品も発表される。会期中は、併設されたバーでコラボレーションメニューの提供も。

佐々木類「不在の記憶」
会期:2025年2月14日(金)~3月8日(土)
場所:WALL_alternative(東京都港区西麻布4-2-4)
時間:18:00~24:00
休館日:日曜


5. 岸裕真「Oracle Womb」(√K Contemporary)

岸裕真『Oracle Womb』メインビジュアル
岸裕真《Oracle Womb》2024 Oil paint, oil medium, acrylic medium, AI-generated image, UV print, canvas, wooden frame 1620x1940x30mm
岸裕真「Imaginary Bones」(2021年、√K Contemporary)展示風景

独自の対話型AI「MaryGPT」と創出する世界

2024年春に東京藝術大学先端芸術表現科修士課程を修了した、岸裕真の修了後初となる個展。AIを「Alien Intelligence(エイリアンの知性)」と捉え直した岸裕真は、人間とAIによる創発的な関係を探求する作品を制作している。2023年からはほぼ全ての制作において、自ら設計した対話型AIモデル「MaryGPT」がキュレーターとして参加。既存のAIアートという概念とは一線を画したアプローチを用いて作品を制作し続けている。

地下から地上2階の3フロアにわたって展開される本展では、「神託(オラクル)」をテーマに、岸が開発した新たなAIモデルや映像インスタレーション、そして大型絵画作品を発表する。また、会期中には現・金沢21世紀美術館長である長谷川祐子をゲストに迎えたトークイベントも開催予定(3月8日14:00~、有料、事前予約制)で、岸独自のAI論をまとめた初の書籍出版の記念イベントも実施される(3月1日18:00~)。

岸裕真「Oracle Womb」
会期:2025年2月22日(土)~3月15日(土)
場所:√K Contemporary(東京都新宿区南町6)
時間:11:00~18:00
休館日:月~木曜

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