グッゲンハイム美術館がまたもやレイオフ実施。全従業員の7%を削減、幹部や学芸員は対象外
財政難が続くニューヨークのグッゲンハイム美術館が、2月28日に新たな人員整理の発表を行った。過去5年で3回目となるレイオフに、同館の組合員は反発している。

ニューヨークのグッゲンハイム美術館が、来館者数の減少や経費高騰による財政難から抜け出せないでいる。その中で、2月28日に新たな雇用調整が発表されたとニューヨーク・タイムズ紙が伝えた。今回は複数の部門で合計20人(全従業員の7%)が削減されるが、幹部クラスに変更はなく、キュレーターもレイオフの対象から外された。
2024年にグッゲンハイム美術館の館長兼財団CEOに就任したマリエット・ウェスターマンのもと、同館は経営の安定化に努めているが、それでもまた従業員へのしわ寄せを余儀なくされた。入場料金の値上げや展覧会数の縮小を行う一方、寄付金は増加しているものの、まだ十分ではないようだ。
ウェスターマン館長は従業員宛て書簡の中で、「全体的な財務状況の改善が目標に達していない」とし、レイオフは効率化のための広範な「組織再編」の一環だと説明している。
グッゲンハイム美術館の人員削減はこの5年間で3回目。過去2回の削減では、副館長2人を含む30人以上のスタッフが対象となった。苦境が続いている主な理由には、コロナ禍での落ち込みからまだ完全に回復していない来館者数がある。アートニュースペーパー紙が毎年実施している美術館の来館者数調査によると、2023年のグッゲンハイム美術館の来館者は2019年の約3割減という結果だった。
さらに、グッゲンハイム財団最大の美術館として期待がかけられているグッゲンハイム・アブダビもさまざまな問題に見舞われ、開館時期が当初の予定より遅れている。
今回の発表について同館の労働組合は、レイオフの事前通告を受けなかったとして苦情を申し立て、交渉を要求。組合代表のオルガ・ブルダストワは、「我われは組合員の雇用を守るために必要なあらゆる手段を講じます」と明言した。
ニューヨークを象徴する建築を誇るグッゲンハイム美術館は、今も文化面での主要なプレーヤーだ。しかし、最近の実績は、同美術館の展覧会来場者記録を塗り替えた2018年のヒルマ・アフ・クリント展の大成功を超えることができないまま苦戦を強いられている。
ウェスターマン館長はニューヨーク・タイムズ紙に対し、「私たちの前に広がるチャンスに、強い希望と熱意を持ち続けています」と語った。しかし、ニューヨークの美術館セクター全体の予算がひっ迫する中、熱意だけでは十分とは言えなさそうだ。(翻訳:石井佳子)
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