ミウッチャ・プラダ、パトリッツィオ・ベルテッリ(Miuccia Prada and Patrizio Bertelli)
拠点:イタリア・ミラノ
職業:ファッション
収集分野:現代アート

高級ファッションブランド、プラダの創業家一族であるミウッチャ・プラダは、イタリアのアートシーンでも有名で、現代アートの作家を長年にわたって支援してきた。「世界がどこへ向かっているのか、アーティストたちから学ぶことができます」と、ミウッチャは2015年のインタビューで語っている。ただし、彼女はアートとファッションを分けて考えているようで、プラダは通常、マーケティングキャンペーンにアーティストを使うことはない。ミウッチャは、ファッションはあくまで仕事で、自分の個性を反映するのはアートだとしてこう語っている。「私が深い関心を抱いているのは、不確かなこと、疑念、衝突、対立なのです」
とはいえ、彼女のアートへの愛とファッション界でのキャリアは、時にクロスオーバーすることもある。その一例が、彼女のオフィスにあるチューブ状の滑り台だ。これは、アーティストのカールステン・ヘラーがデザインしたもので、オフィスから下の中庭へとつながっている。こうした遊び心は、ミウッチャと夫のパトリッツィオ・ベルテッリが2015年にミラノにオープンしたプラダ財団の美術館にも見られるものだ。
レム・コールハースの設計によるこの美術館は、新築の建物と既存の古い倉庫が混在したユニークな複合施設で、オープニングの展覧会「シリアル・クラシック」では、ギリシア時代の美術品をローマ時代に複製したものが集められた。以降、ベティ・サール、ヤニス・クネリス、H・C・ウェスターマンといった1960年代から70年代を中心に活躍したアーティストの個展が開かれている。プラダとベルテッリにとって、現代アートの美術館を開いて最新の作品を展示するのは「当たり前すぎる」のだという。しかし2018年には、プラダ財団美術館に9階建ての建物「トーレ」が加わり、2人の所有する現代アート作品を展示している。
2023年、ミウッチャはプラダ財団のディレクターに正式就任し、同財団の運営委員会を設立。プレスリリースによれば、同委員会は、研究者や科学者、アーティスト、映画製作者で構成されることになっており、発足メンバーには、アーティストのシアスター・ゲイツや映画監督のアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥが名を連ねている。