ボブ・レニー(Bob Rennie)

拠点:カナダ・バンクーバー
職業:不動産業
収集分野:現代アート

バンクーバーを拠点に不動産業を展開する「コンドミニアム王」ボブ・レニー。カナダの現代アートシーンの大物でもある彼が大事にしているのは、1974年に18歳で手に入れたノーマン・ロックウェルの版画だ。価格は数万円だった。

現在彼は、ジョン・バルデッサリ、マイク・ケリー、クリストファー・ウールなど約370人のアーティストの作品2100点近くを所有。このカナダ最大級の現代アートコレクションは、私設美術館「ウィング・サング」でも展示されていた。コレクションで最も高価な作品は、ケリー・ジェームズ・マーシャルの《Untitled (Red, Black, Green)》(2011-12)で、その価値は約2600万ドル(約38億円)と推定される。

2022年、ウィング・サングは中国系カナダ人博物館に移行することが明らかになった。このプロジェクトに、レニーは780万ドル(約11億3000万円)を寄付している。同じ年にレニーは、ウィング・サングで自らのコレクションから51人の作家を紹介する最後の展覧会を行った。

《Untitled (Red, Black, Green)》以外にも、レニーのコレクションにはマーシャルの貴重な作品がある。米ブルームバーグによると、レニーがマーシャルの《Garden Party》(2003)を手に入れるまで10年かかっている。そして、ようやく作品を購入することができたとき、ディーラーのジャック・シェインマンは、彼が辛抱強く待ってくれたからと、価格の50パーセントを割引してくれたという。

レニーの邸宅は、増え続けるアート作品を収容するために大幅な改築が施されている。たとえば、娘のケイトが大学を卒業して引っ越した後、その部屋をララ・ファヴァレットの《Tutti giu per terra》(2004)のインスタレーション用に改装した。「通風孔を塞いだことで空調システムがおかしくなってしまった。部屋のドアは、床から天井まで届く一枚のプレキシガラスに取り替え、部屋を密閉している」と、レニーは説明する。

2019年には、アリス・ニールの《Nazis Murder Jews》(1936)と《Childbirth》(1939)、そしてラトーヤ・ルビー・フレイジャーの写真シリーズ「The Notion of Family」(2001-14)を購入するなど、レニーのコレクションは急速に拡大している。しかし彼には作品を売る気はない。2015年にレニーは、ブルームバーグ・ビジネスにこう語っている。「私ができる最高の投資は、アートを持ち続けることだ」


注:記事中の円換算額は、US版ARTnewsで2022年版トップ200コレクターズが発表された2022年10月時点の為替レートによる。