カール&マリリン・トーマ(Carl and Marilynn Thoma)
拠点:アメリカ・ダラス
職業:プライベートエクイティ投資(Thoma Bravo)
収集分野:中南米のスペイン語圏の美術、デジタルおよびメディア・アート、日本の竹による作品、戦後美術
オクラホマ州パンハンドル出身のカール・トーマが初めてシリコンバレーにやって来た1970年代、テック業界はまだ黎明期にあった。彼が設立したソフトウェアテクノロジー分野のプライベートエクイティ投資会社、トーマ・ブラボーはウォール街でトップクラスの業績を誇るまでになり、その運用資産は830億ドル(約12兆円)を超えると推定されている。
革新的なハイテク企業を探し求めてきたトーマは、やがて最先端のアートにも目を向けるようになる。そしてCGアートに魅了された彼は、US版ARTnewsに「このアートがいつか主流になると確信した」と語った。
トーマと妻のマリリンは、1500点近いコレクションをシカゴを拠点とする自らの財団に収蔵。カールが先駆的なデジタル作品を中心に収集しているのに対し、マリリンは25年ほど前から「総督府時代の芸術」を購入してきた。これは、17世紀から19世紀にスペインの植民地支配下にあった現在のラテンアメリカで制作された絵画に特化したカテゴリーのことを指す。そのほかにも、クリスチャン・マークレーやナム・ジュン・パイクといった映像作家、サム・フランシスやヘレン・フランケンサーラーのような抽象表現主義の作家まで多様な作品を所有し、何度か国内を巡回する展覧会を行っている。
トーマ夫妻がこうした巡回展を開催するのは、自分たちのコレクションを幅広い人々と共有したいと考えているからだ。また、アートの売買には関心がなく、「利ざやを稼ぐために売るつもりはありません。私たちは、一般の人々と共有するためにアートを購入しているのです」と述べている。