デイヴィッド・トムソン(David Thomson)
拠点:カナダ・トロント
職業:メディア
収集分野:近現代アート、オールドマスターズ
デイヴィッド・トムソンは、父から美術品収集への情熱と数十億ドルの財産を受け継いだカナダで最も裕福な人物だ。父のケン・トムソンがイタリア・ルネサンスなどのヨーロッパ美術、船の模型、20世紀初頭のカナダの絵画を収集していたのに対し、デイヴィッドの2000点に及ぶコレクションは、アラン・デイヴィー、パトリック・ヘロン、ピーター・ラニヨン、ロジャー・ヒルトン、ウィリアム・スコットといった戦後のイギリス人画家からイヌイット・アート、中世の彫刻まで幅広い。特に19世紀イギリスを代表する風景画家、ジョン・コンスタブルのコレクションは世界一と見なされている。また、所有作品を売却することもあり、作品を売るのはコレクションを進化させる一助になると、英アートメディアArtlystの取材に答えたことがある。
米フォーブス誌によれば、トムソン家はデイヴィッドが会長を務める世界的メディア企業、トムソン・ロイターの株を350株以上保有。また、トロントに本社を置くグローブ・アンド・メール紙の大口株主でもある。2020年4月、フォーブス誌の富豪ランキングでトムソンはカナダのトップに返り咲いた。316億ドル(約4兆5800億円)と推定される純資産は、2位のアリババ・グループの共同創業者ジョセフ・ツァイの3倍に相当する。なお、同年の世界富豪ランキングでは24位になった。
トムソンはまた、トロントのオンタリオ美術館の長年のパトロンであった父の後を受け継ぎ、支援を続けている。父ケン・トムソンは、ニューヨークのメトロポリタン美術館に競り勝って1億1700万ドル(約170億円)という破格の価格で落札したピーテル・パウル・ルーベンスの《幼児虐殺》を、オンタリオ美術館に寄贈している。一方、デイヴィッドは、オンタリオ美術館の改修費用に2億7600万ドル(約400億円)以上を寄付。さらに2000万ドル(約29億円)で同美術館のための基金を設立した。
注:記事中の円換算額は、US版ARTnewsで2022年版トップ200コレクターズが発表された2022年10月時点の為替レートによる。