あの「かいじゅう」を描いたポスター原画がオークションへ。愛読書はブロンテ作品?
サザビーズは、アメリカを代表する絵本作家モーリス・センダック(1928-2012)が1979年に制作した、『かいじゅうたちのいるところ』のキャラクターを描いたポスター原画が12月10日のオークションに出品されることを発表した。予想落札価格は30万ドルから60万ドル(約4500万円~9000万円)。
モーリス・センダックはアメリカを拠点に活躍した絵本作家。センダックが1963年に発表した代表作『かいじゅうたちのいるところ』は、世界で2000万部が販売されたベストセラーだ。サザビーズは、ニューヨークで12月10日に開催するオークション「Fine Books and Manuscripts」に、センダックのポスター原画を出品すると発表した。
69センチ×60センチの原画《ニューヨークは本の国》は、1979年から2010年までニューヨーク5番街で毎年開催された、本にまつわるストリートフェスティバル「ニューヨークは本の国(New York is Book Country)」の第1回のために制作された。同フェスティバルでは以降チャールズ・シュルツ、リチャード・スキャリー、キース・ヘリングといった著名アーティストがポスターを手掛けている。センダックの同作は、『かいじゅうたちのいるところ』に登場する有名なかいじゅうが、エンパイアステートビルに寄りかかりながらシャーロット・ブロンテの小説『ヴィレット』を読んでいる様子がペンと水彩で描かれている。この作品は1996年に作家から直接今の持ち主に渡り、以来30年近く個人コレクションとして所蔵されてきた。
サザビーズの書籍と原稿専門家のエラ・ホールはUS版ARTnewsの取材に対して、もともとこの作品の所在は知っており、「持ち主は、それを次のコレクターに引き継ぐ時が来たのではないかと悩んだ末に、決断を下したのです」と明かした。そして同作について「モーリス・センダックの作品について考えるとき、最初に思い浮かぶのは『かいじゅうたちのいるところ』です。私はずっとこの作品を愛してきたので、これを市場に出す機会を得ることができて感激しています」と語った。
ホールとその同僚は、《ニューヨークは本の国》の予想落札価格を算出するにあたり、『かいじゅうたちのいるところ』のキャラクターが登場する類似作品のオークション落札記録、作品のサイズ、ニューヨークの象徴的な建物の描写、そしてセンダックが20世紀で最も重要な絵本作家の1人であるという評価を考慮したという。「これらは、彼の市場と当社の価格設定に大きな影響を与えます」とホールは説明した。さらにこの作品は、2013年に開催されたセンダックの展覧会にも出品された上にアブラムス社から出版された展覧会の図録の表紙になっており、そのことも加味された。
こうして割り出された《ニューヨークは本の国》の予想落札価格は30万ドルから60万ドル(約4500万円~9000万円)となった。現在、デンバー美術館で2025年2月までセンダックの回顧展が開催されていることから人々の彼の作品への関心は高まっており、さらに、現在も『かいじゅうたちのいるところ』の人気が続いているため、今回センダックの原画のオークション新記録を樹立する可能性がある。ホールは、「《ニューヨークは本の国》は、多くの点で現在の記録に匹敵する作品です。また彼の死後、センダックの市場は成長しています」と分析する。そして「おそらく彼の作品のオークション記録を塗り替えることになるでしょう」と付け加えた。
12月10日に開催されるオークションでは、《ニューヨークは本の国》のかいじゅうが読んでいたシャーロット・ブロンテ『ヴィレット』の初版本も出品される。(翻訳:編集部)
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