レディ・ガガも所有する『オズの魔法使い』のルビーの靴がオークションへ。下見会は東京でも開催
アメリカ・ミネソタ州グランドラピッズにあるジュディ・ガーランド博物館に展示されていた映画『オズの魔法使い』の小道具「ルビーの靴」が2005年に盗まれ、13年後となる2018年に犯人が逮捕された。持ち主のもとに戻されたこの靴が2024年12月にオークションに出品されることが明らかになった。
ミネソタ州グランドラピッズにあるジュディ・ガーランド博物館は、俳優ジュディ・ガーランド(1922-1969)の復元した生家と展示棟で構成される施設だ。展示棟には、1939年に制作された代表作『オズの魔法使い』に登場する馬車や、主人公ドロシー・ゲイル役のテストドレスなど、40年間にわたって収集されたガーランドの私物が展示されている。
『オズの魔法使い』の中で最もアイコニックな小道具は、物語の鍵となる「ルビーの靴」。現在4足が確認されており、2005年に同館はそのうちの1足を持つコレクターのマイケル・ショーから10週間の期限で借り受け、展覧会を開催した。しかし会期中に、同館の窓ガラスを割って侵入した人物によって盗まれてしまった。当時ショーは靴を取り戻すため1000万ドル(現在の為替で約16億円)の賞金を出した。
FBIによる捜査の結果、2018年に窃盗の常習犯テリー・ジョン・マーティンが逮捕された。彼の弁護士によると、マーティンはこれまで『オズの魔法使い』を見たことがなく、その靴の文化的価値にも気づいていなかった。だが「ルビーの靴」に100万ドル(同・約1億6000万円)の保険がかけられていると知り、本物のルビーを使っているものと勘違いし犯行におよんだという。スパンコールだけの靴にがっかりしたマーティンは、靴を仲間にあげた。
FBIは「ルビーの靴」を回収し、マイケル・ショーのもとへ返した。その後ショーは、靴をヘリテージ・オークションズに委託。2024年12月にオークションが行われることが決まった。予想落札額はまだ発表されていないが、FBIの見積もりによると350万ドル(約5億6000万円)相当の価値があるという。
この窃盗事件が起こった当時、ジュディ・ガーランド博物館は開館してまだ2年しか経っておらず実績も無かったため、長らく事件の影響に苦しんできた。同館のエグゼクティブ・ディレクターであるジャニー・ハイツは、ワシントン・ポスト紙の取材に、「誰もジュディ・ガーランドの資料を貸してくれなくなり、チャンスを逃す日々が続きました」と振り返る。
現在同館は、ショーが手放した「ルビーの靴」を手に入れようと奮闘している。これまで自身のホームページで募金を募ってきたが、先日、州議会から10万ドル(約1600万円)の支援が決まった。
ティム・ウォルツミネソタ州知事も、5月30日、X(旧ツイッター)に「ジュディ・ガーランドの『ルビーの靴』を購入した同館は、24時間365日、映画『オーシャンズ11』並みのセキュリティのもと、誰もが楽しめるように展示するでしょう」と投稿し、後押しした。
ヘリテージ・オークションズもジュディ・ガーランド博物館の試みを歓迎する。ジョー・マッダレーナ副社長はワシントン・ポスト紙に対し、同館の努力は 「本当に素晴らしい話だ」とし、同館に所蔵されることにより、アメリカ中部の人々に靴を広く見てもらえるようになるため、成功することを願うと語った。
同館のエグゼクティブ・ディレクターであるジャニー・ハイツは、「この『ルビーの靴』には家が必要です。私たちはその家になれるかもしれません。これぞハリウッド流の最高のハッピーエンドでしょう」 と意気込みを語る。
現存する4足の「ルビーの靴」は、ワシントンD.C.のスミソニアン国立アメリカ歴史博物館に展示されているものと、過去にレオナルド・ディカプリオが購入し、アカデミー映画博物館に寄贈したものがあり、最後の1足はレディ・ガガが25歳時の誕生日プレゼントとして自身で購入し、所有している。
今回ヘリテージ・オークションズに出品される1足は、販売に先立って10月から11月にかけてニューヨーク、ロンドン、東京など4都市を巡回展示する予定だ。(翻訳:編集部)
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