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サンギータ・ジンダル(Sangita Jindal)

拠点:インド・ムンバイ
職業:鉄鋼を中心としたコングロマリット(JSWグループ)、フィランソロピー(JSW財団)
収集分野:現代アート

インドの著名フィランソロピストでコレクターのサンギータ・ジンダルがアートに触れたきっかけは、母親のウルミラ・カノリアが1984年にアーメダバードでカノリア・アートセンターを立ち上げたことだった。「母がアートや建築の振興に力を入れていたので、子どもの頃から近現代アートに触れる機会があったのです」と、ジンダルは語っている。

19歳で初めてアート作品を購入して以来コレクションを続けている彼女は、1994年に自身の名を冠した文化施設、ジンダル・アーツ・クリエイティブ・インタラクション・センターを設立。「初めて買ったのは、インドを代表する現代アーティストの1人、アンジョリー・エラ・メノンの小さな具象画でした。また、コレクションの中で最も気に入っている作品は、クリシェン・カンナの《Girl on a Swing》(1990年代頃)です。規範に従うことが求められる社会の中で、この絵は私に自由に生きることを示してくれます。絵の中のブランコが表しているのは、夢を見たり、ファンタジーを人生に取り入れたりする能力。私にとって、カンナの作品は人生の意義を象徴するものなのです」

ジンダルは現在、アート・インディア誌の社長であり、インド有数のコングロマリットJSWグループの生活環境改善部門であるJSW財団の会長でもある。夫のサジャン・ジンダルが率いるJSWグループは、サジャンの父親オム・プラカシュ・ジンダルが設立した同族企業、O.P.ジンダル・グループの一部で、鉄鋼やエネルギー、インフラ、自動車産業など幅広い分野で事業を展開している。米フォーブス誌によると、ジンダル家の純資産は2017年時点で77億ドル(約1兆1200億円)と推定される。

母親同様、アートへの情熱を次の世代に伝えたいと考えるジンダルは、最近、娘のタリーニ・ジンダル・ハンダとともに、南インドにレジデンスプログラムを運営するアートセンター、ハンピ・アート・ラボを設立した。「南アジアには、アーティストが考えをめぐらせたり、ゆったりした環境で精神を研ぎ澄ましたり、他のアーティストやキュレーター、思想家とさまざまな可能性について話し合ったりできる場があまりないのです」とジンダルは言う。「将来インドが芸術大国になるには、さまざまな形の創造性を生み出し、それを奨励するための中心となる施設が必要です」

注:記事中の円換算額は、US版ARTnewsで2024年版トップ200コレクターズが発表された2024年10月時点の為替レートによる。

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