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飾って楽しめ、将来価値が上がる!? 世界的な現代アーティストによるエディション付きアートグッズ5選

アートプロダクトブティックやミュージアムショップなどでは、世界的に人気のあるアーティストたちによる限定版グッズや特別アイテムが、手頃な価格で販売されている。これらは、コレクターが重視する、来歴や真正性も保証されており、アーティストが手掛けた一点ものの作品や絵画と同じようなペースで値上がりすることもよくある。オークションハウスもまた、こうした商品をアーティストの仕事の一角を成す無視できない作品として扱うようになってきている。

シャンテル・マーティンの陶磁製ピッチャー。詳細は以下 Photo : Artware Editions

芸術作品として価値があり、美術館をサポートし、チャリティやアートコミュニティに貢献するアートグッズ。以下、ARTnews編集部おすすめの5点をご紹介。ほとんどのアイテムは数量限定なので、気に入った商品があれば、売り切れる前に早めに購入した方がいいかもしれない。

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シャンテル・マーティン:磁器製ピッチャー 165ドル

絵柄を全面にスクリーンプリント後、焼成した白磁のピッチャー。裏面にエディション・ナンバー(150点限定)と作家のサイン

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ロンドンを拠点とするシャンテル・マーティンは、ビジュアルアートを中心に多分野で活躍するクリエイターだ。マーティンは、今人気を集める黒人現代アーティスト(ヒューゴ・マクラウド、パトリック・マルチネス、エイミー・アマリア)とともに、アフリカ医療研究財団(AMREF)を支援するため2022年の「世界水の日」記念の磁器製ピッチャーを制作した(150点限定)。売り上げは、アフリカの地方の村々に83万リットル以上の飲料水を届けるAMREFの活動に使われる。

マーティンは、ニューヨークの92Yギャラリーや権威あるオルブライト=ノックス美術館、ニューブリテン・アメリカ美術館(コネチカット)など、いくつもの有名アート施設で個展を開いている実力者。コレクターの間では、彼女のビジュアルアートや絵画、NFTの人気がますます高まっている。と同時に、プーマ、ナイキ、ヴィトラ、マックスマーラ、ティファニー、ワービーパーカーなどの有名ブランドとの仕事も多く、ケンドリック・ラマーのような伝説的なアーティストや、ケリー・ウェアスラーなどの著名デザイナーともコラボレーションしている。

計4名のアーティストが参加した、非常に美しいピッチャーのシリーズは、使用するより彫刻のように飾ることをお勧めしたい。それぞれ素晴らしい芸術作品となるであろう。

デリック・アダムス:トートバッグ 35ドル

デリック・アダムスの作品《How I Spend My Summer Break (Unicorn)(ぼくの夏休みの過ごし方〈ユニコーン〉)》(2021)がプリントされたRxARTの限定版キャンバス地トートバッグ Photo : RxArt

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ユニコーンの浮き輪は、ブルックリンを拠点に活動するアーティスト、デリック・アダムスの作品世界をよく表している。最も知られる彼の作品は、アフリカ系アメリカ人がレジャーを楽しむ「Floater(フローター)」シリーズだからだ。アダムスにとって、黒人が休息とレクリエーションを楽しむ様子は、政治的な行為なのだ。

批評家から高く評価されているアダムスの仕事は、絵画、コラージュ、彫刻、パフォーマンス、ビデオ、サウンド・インスタレーションなど、多岐にわたる。彼は、美術史やアメリカの図像学、消費主義などと、アフリカ系アメリカ人の体験がどう交わるのかを探求している。その作品は、メトロポリタン美術館(ニューヨーク)や、ハーレムのスタジオ美術館(同)、ホイットニー美術館(同)など、多くの美術館に所蔵されている。

このトートバッグのユニコーンは、ハーレムにある病院、ニューヨーク・シティ・ヘルス・ホスピタルズの小児科救急外来の治療室にアダムスが描いた、6点の遊び心あふれる壁画のイメージの一つ。販売で得られた収益は、病気の子どもたちをビジュアルアートの力で癒そうとする非営利団体、RxARTの活動のために使われる。

ジョエル・メスラー:ボーンチャイナのアーティスト・プレート 195ドル

《Untitled (Bruised Fruit)(無題〈傷んだフルーツ〉)》(2020)プロスペクト社製ファインボーンチャイナ 裏面にエディション・ナンバー(250枚限定)と作家のサイン入り Photo : Artware Editions

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メスラーがデザインした、明るく楽しいネオポップな絵柄の皿は、彼の美学をよく表している。何人もの素晴らしいアーティストが参加する、「Artist Plate Project(アーティスト・プレート・プロジェクト)」のうちの一つ。売り上げはホームレスの人々への支援に役立てられ、1枚の皿の購入だけで、ニューヨークに住むホームレスの人たち100人に食事を提供することができる。記事執筆時点でまだ購入可能な同プロジェクトの作品には、オースティン・リー、リサ・ユスカベージ、キース・ヘリングなどのものがある。

ジョエル・メスラーは、明るく青々と茂った植物などの絵柄と短いフレーズを組み合わせた親しみやすい絵画で知られ、時に心地よく、時に愉快なメッセージを発信している。人気作品は、数十万ドルの値が付くことも珍しくない。サンフランシスコ・アート・インスティテュートの修士課程を卒業したメスラーは、20年近くアートディーラーとして働き、ヘンリー・テイラーやラシッド・ジョンソンなどの有名アーティストを駆け出しの頃に支援。その傍ら、断続的に自ら絵を描いていた。作品の人気が急増した現在は、制作に専念している。

河井美咲:クッションスカルプチャー 85ドル

韓国のブランド、キティバニーポニーと河井美咲がコラボした限定版クッション《Moko Moko Peko Peko》(数量不明) Photo : Courtesy of Misaki Kawai

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子どものような作風で知られる日本人アーティスト河井美咲が手掛けた、この素晴らしくソフトな「彫刻」は、彼女のスタジオのウェブサイトから購入可能だ。そこには、ほかにも楽しいアートグッズや限定版のアート本が多数販売されている。

河井は、紙や木、布、フェルト、シール、毛糸といった、ローテクで「手芸的」な素材を使ってインスタレーションを制作。専門的な技術よりも、素人風の単純な表現を敢えて使う「ヘタウマ」の手法で、国際的に存在感を増しつつあるアーティストだ。

彼女はこれまでにボストン現代美術館、スウェーデンのMalmö Konsthall(マルメ・コンストハール)、ニューヨークのチルドレンズ・ミュージアム・オブ・アーツ、東京のワタリウム美術館など、世界各地で展覧会を開催している。

ライアン・マッギンレー:ビーチタオル  95ドル

ライアン・マッギンレーがデザインしたコットンのビーチタオル。限定版 約150 × 180センチ(数量不明)

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この巨大なコットン製のビーチタオルは、数量限定品だという。記事執筆時点で販売サイトには、マッギンレー以外にもグレン・ライゴン、ローリー・シモンズ、ジュリアン・シュナーベルなど、第一線の現代アーティストがデザインしたビーチタオルが、まだ数点ずつ残っているようだ。 販売から得られた収益はすべて、パブリックアートの制作を手がけるNPOのアート・プロダクション・ファンド(Art Production Fund)の活動資金として使われる。この印象的なタオルは、額装して大型の作品として楽しむこともできるし、ビーチで使うことも可能だ。

ライアン・マッギンレーは、米国における芸術写真の分野では、最も有名な存命作家の一人。大きくプリントされた彼の作品は芸術写真のコレクターや、ダッシュ・スノーやダン・コーレンを含む2000年代初頭のバワリー・スクールの作家のファンの間で人気を博している。

2003年にホイットニー美術館で個展を開催したマッギンレーは、当時弱冠25歳。同美術館で個展を開いた最年少のアーティストの一人だ。マンハッタンのダウンタウンの反骨精神を捉えた初期の作品から、クィアカルチャー、アイデンティティ、アメリカの象徴的な風景を探求する洗練されたスタジオポートレートまで、多くの作品を発表してきた。(翻訳:野澤朋代)

※本記事は、米国版ARTnewsに2022年4月25日に掲載されました。元記事はこちら

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