世界最高齢のスタイル・アイコンとして愛されたアメリカのインテリアデザイナーで実業家のアイリス・アプフェル。2024年3月に102歳で死去した「マキシマリスト」は、その独特な審美眼や個性が光る多数のファッションピースや絵画、彫刻、家具を遺した。

そんなアプフェルの多彩なコレクションが1月28日から2月13日まで、クリスティーズのオンラインオークションに出品される。オークションはその名も「堂々たるアイリス： アイリス・アプフェルのコレクション」。彼女のワードローブにあったクチュール服や、ニューヨークやパームビーチの自宅に飾られていた家具や装飾品、そして彼女が熱心に集めていたアクセサリーなど200点以上が出品される。

1921年、ニューヨークのクイーンズに生まれたアプフェルは、幼少期からアンティークショップに通ってセンスを磨いた。その後ニューヨーク大学で美術史を専攻し、インテリアデザイナーのエリノア・ジョンソンのもとで修業した。そして1950年、彼女は夫のカール・アプフェルとともに、17～19世紀の織物の複製を専門とするテキスタイル会社、オールド・ワールド・ウィーバーズを設立。 ホワイトハウスを顧客に持つほどに成功し、アプフェルは世界中を飛び回った。

カラフルなアクセサリーやユニークなファッション・ピースのコレクションを始めたのも、こうした出張がきっかけだった。世界中のアイテムを卓越したセンスでミックスしたり重ね合わせたりすることで、アプフェルは大きなメガネ、大胆なリップ、バングルの重ね付けなどの独自のスタイルを築いていった。彼女のインスタグラムには今も、「多ければ多いほどいい、少なければ少ないほどつまらない」という言葉が掲げられている。2005年にコスチューム・インスティテュートで開催されたアプフェルのコレクション展「Rara Avis」は成功を収め、全米を巡回した。

今回のオークションに出品されるのは、ディオールのオートクチュール・フェザー・コートが予想落札額800〜1200ドル（約12万円～約19万円）、キャロライナ・ヘレラのトライカラー・ブロック・シャツ・ガウンが1200～1800ドル（約19万円～約28万円）など。 また、アプフェルが眼鏡ブランドZenniとのパートナーシップでデザインした18本のメガネフレームセット400～600ドル（約6万円～約10万円）も彼女らしさを感じられる品物だ。アプフェルのオリジナルの審美眼は、アート作品にも表れている。 17世紀の無名の画家によるスペインのマルガリータ・テレサの肖像画は1500〜2000ドル（23万円～31万円）、カール・ライヒェルト《襟に赤いポンポンが付いたマルチーズ》は500～800ドル（約8万円～約13万円）。

だが、このオークションで一番の目玉は高さ2メートルのダチョウの彫刻で、予想落札価格は6000〜8000ドル（約94万円～約126万円）だ。開くとバーのスペースが現れるこのオブジェは、かつてアプフェルのニューヨークのアパートメントに飾られていたもので、カーミット・ザ・フロッグのぬいぐるみと一緒に販売される。

オークションに先立ち、出品作品の一部はクリスティーズ・マイアミで1月24日と25日、そしてパームビーチのコロニー・ホテルで1月29日から31日まで展示される。そして全作品が2月8日から13日までクリスティーズ・ニューヨークで公開される。

あわせて読みたい

• クリスティーズ職員が大手柄！ 「直感」でターナー作品と見抜いた作品がオークションへ
• 190億円に迫るマグリットから「9億円バナナ」、ナポレオンの拳銃まで、2024年の高額落札20選【2024年アートニュースまとめ】