宇宙から古代エジプトの「謎の建造物」を発見? 衛星画像と地中探査で約2600年前の遺構に迫る

エジプトの古代都市ブトで、約2600年前の大型建造物と見られる遺構が発見された。衛星画像と地中探査による調査では、建造物の下に人工的に敷かれたとみられる砂の層も確認され、古代エジプト人の建築技術を知る新たな手がかりとして注目される。

古代都市ブトのコムC地区で行われた調査の記録。左中央は、地中探査の対象区域を示した地図で、右上にはレンガで作られた構造物が写っている。下段には、出土品(左)と、発掘区域の地層を示す断面図(右)が掲載されている。Photo: Abouarab et al.,Acta Geophysica (2026)

ナイル川デルタ北西部の古代都市ブトの地下に、約2600年前の大型建造物と見られる遺構が発見された。エジプトなどの研究チームが衛星レーダーと地中探査を組み合わせて建造物の位置や規模を推定し、実際の発掘調査でもその一部を確認した。調査結果は2026年3月、学術誌『Acta Geophysica』に発表されている。

ブト(現在のテル・エル=ファライン)は、先王朝時代から初期イスラーム時代にかけて、断続的に人々が暮らした広大な遺丘だ。異なる時代の居住の跡が幾層にも積み重なっており、考古学者たちは長年にわたって遺跡の上層を発掘し、プトレマイオス朝やローマ時代の遺構を調査してきた。しかし、コムCと呼ばれる丘では、それらの時代の層より深く掘り進めると地下水面に達するため、さらに古い時代の遺構は十分に調査できていなかった。

そこで研究チームは、衛星画像をはじめとする非破壊調査に乗り出した。用いられたのは欧州宇宙機関(ESA)の衛星「Sentinel-1」だ。この衛星は、軌道上から照射したマイクロ波の反射を捉えてレーダー画像を作成するもので、地表の水分量や高さ、反射率のわずかな違いから、地下に埋もれた構造物の手がかりを得られる。2018年5月に撮影された画像を解析したところ、コムCで長さ128メートル、幅62メートルに及ぶ、サッカー場ほどの楕円形の領域が確認された。ただし、論文によれば、この形は衛星の観測方向の影響によるもので、実際の構造物の形状は異なる可能性があるという。

遺跡を傷つけずに詳しく調べるため、チームは約5400平方メートルの範囲に15本の測線を平行に設定し、電気比抵抗トモグラフィー(ERT)による調査を実施した。これは地中に電流を流してその伝わり方を測定し、地下の構造を可視化する手法だ。調査の結果、地表から深さ3メートルまでの層には、プトレマイオス朝やローマ時代のものとみられる日干しレンガや石灰岩、土器の破片が散在していることが分かった。

さらに深い3〜6メートルの層では、日干しレンガ造りの大型建造物の存在を示す反応が確認された。ERTの解析によれば、建造物は約20×25メートルの長方形で、壁の厚さは最大5メートルに及ぶという。カフル・エル=シェイク大学の調査団が10メートル四方を発掘したところ、地表から3〜4メートルほどの深さで複数の日干しレンガの壁が出土した。周辺からは、ブトの守護女神ウアジェトやイシス、ホルス、タウエレトといった神々をかたどったアミュレット、小さな供物盤、トトメス3世の名を刻んだ凍石製のスカラベなども見つかっている。こうした出土品に加え、地層の位置や日干しレンガの形状、土器の特徴から、建造物は第26王朝(サイス朝)時代に使われていたとみられる。研究チームは、この大型建造物が墓や神官の住居、宗教施設として使われていたと推測しており、特に数多くの宗教的な遺物が出土したことから、神殿だった可能性も指摘している。

そして、建造物の下にあたる地下6〜7メートルの地点では、厚い砂の層が存在する可能性が示された。過去の調査では、ブトの自然の砂層は地表から約14メートルの深さで確認されており、今回の砂層とみられる部分はそれよりもはるかに浅い。また、砂層とみられる部分は、調査区域の広い範囲でほぼ一定の深さに確認された。こうした特徴から研究チームは、サイス朝の建設者たちが工事に先立って地盤を平らにならし、建造物の基礎として意図的に砂を敷き詰めた可能性が高いと考えている。古代エジプトでは、軟弱な地盤に対処するため、「砂箱基礎」と呼ばれる砂を利用した基礎工法が用いられた例もあり、今回の発見は当時の建築技術を知る新たな手がかりとなる。

研究チームは、電極の間隔を広げたERT調査をほかの区域にも展開し、より深い居住層を調べる必要があるとしている。論文では、すでに知られている神殿のほかに、もうひとつの神殿が厚い粘土層の下に眠っている可能性にも言及している。

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