奈良美智が紫綬褒章を受章。「芸術は、必ずしも社会の役に立つことを証明しなくてもいい」
現代美術家の奈良美智が、2026年秋の紫綬褒章に選ばれた。奈良は受章への感謝を表す一方、メディアの取材に対し、権威と距離を置いてきた自身の姿勢や、効率や実用性では測れない芸術の価値について語った。

日本政府は11月2日付で、2026年秋の褒章受章者736人と25団体を発表した。紫綬褒章には、現代美術家の奈良美智らが選ばれた。発令は11月3日となる。
紫綬褒章は、科学技術分野の発明・発見や、学術、スポーツ、芸術文化の分野で優れた業績を挙げた人に贈られる。毎年、春は4月29日、秋は11月3日に発令され、過去には石内都(2013年)、畠山直哉(2015年)、青木野枝(2021年)、鴻池朋子(2023年)らが受章している。
奈良は11月2日、Xに「多額の寄付や社会貢献に贈られる紺綬褒章はずっと断り続けてきましたが、自分の続けてきた美術を評価していただいた紫綬褒章は感謝し謹んでお受け致します」と投稿した。
朝日新聞のメールインタビューでは、これまで作品を見てくれた人や、活動を支えてくれた人たちへの感謝を表する一方、世の中の常識や権威とは距離を置いて活動してきただけに、国から褒章を受けることに不思議な感覚があると明かした。
奈良はまた、誰かに認められることを目標に制作してきたわけではなく、流行や市場の求めるものよりも、自分の内側から生まれるものを大切にしてきたと説明。その姿勢も含めて評価されたのであればうれしい、と述べた。
さらに、今回の受章を機に制作や活動を変える考えはないとも語り、速さや効率、わかりやすさを求める社会にあっても、絵を描くことには、時間をかけたり、遠回りしたりする余地があっていいと続けている。
「芸術は、必ずしも社会の役に立つことを証明しなくてもいいと思うんです。むしろ、何でも役に立つかどうかで判断する社会の方が、少し心配です」
奈良の活動は、今後も国内外で展開される。2027年秋には、アメリカのサンフランシスコ近代美術館(SFMOMA)で、北カリフォルニアでは初めて、その活動を包括的に紹介する大規模な回顧展が開催される予定だ。