MoMA、ポンピドゥー・センター、M+が異例の提携を発表。3館の所蔵品を単一のコレクションとして共有へ

ニューヨーク近代美術館(MoMA)、パリのポンピドゥー・センター、香港のM+が、前例のない規模の包括的な提携を発表した。3館の所蔵品をひとつの共有コレクションとして扱い、3大陸のスタッフが共同でキュレーションを行うという。持続可能な運営を目指し、従来の枠組みを超えて美術館の新しい未来を描く試みだ。

バルコニーに立つ3人。左から、MoMAのキュレーター兼ディレクターのクリストフ・シェリックス、M+館長のスハンヤ・ラフェル、ポンピドゥー・センター館長のローラン・ル・ボン。© Centre Pompidou/Photo Chau-Cuong Lê

6年前、香港の美術館M+の館長スハンヤ・ラフェルは、文化戦略家アンドラス・サントの著書『The Future of the Museum(美術館の未来)』のインタビューで、今後の美術館は「より持続可能な運営基盤を築くため、連帯して助け合う必要がある」と語った。さらに、美術館の次なる章ではコラボレーションが重要な鍵になるとも。

その言葉は現実のものとなったようだ。10月30日、香港のM+、ニューヨーク近代美術館(MoMA)、パリのポンピドゥー・センターは、前例のない規模の包括的な文化提携を発表した。提携の核となるのは、3館の所蔵品をひとつの共有コレクションとして扱い、3大陸にまたがるスタッフがキュレーションを手がけるという合意だ。

ポンピドゥー・センターの館長であるローラン・ル・ボンは、M+のラフェルやMoMAの館長であるクリストフ・シェリックスとともにパリで応じた合同インタビューで、「この試みが成功すれば、単に3館を足し合わせた以上の存在になれるでしょう。これは非常に新しい取り組みです」と語った。

共有コレクションは数十万点規模

MoMAとポンピドゥー・センターの所蔵品を合わせるだけでも、共有コレクションの総数は数十万点にのぼる。さらに3館はいずれも膨大なアーカイブを管理している。6年前に開館したM+の所蔵品は約8,000点だが、スイスの実業家で元外交官のウリ・シグから寄贈された作品を軸に、中国現代美術の決定版ともいえるコレクションを誇る。一方、ヨーロッパ最大の近代美術館を擁するポンピドゥー・センターの所蔵品は、フランス政府が所有する国立コレクションだ。

見込まれる観客層の規模も計り知れない。現在の数値に基づけば、3館の合計で年間1,000万人の来館者と、1億2,500万人のオンライン訪問者にリーチできることになる。

長期貸与や企画展など順次始動

コレクションの共有は、複数のプロジェクトから順次始動する。2027年後半には、M+の主要作品が長期貸与のかたちでMoMAのコレクション・ギャラリーに展示されるほか、2028年にはMoMA館内にポンピドゥー・センターの長期展示室が開設される予定だ。同様の計画は他の2館でも並行して進められている(なお、ポンピドゥー・センターは現在5年間の大規模改修のため休館中で、2030年に再開予定だ)。

また提携の一環として、今後5年間にわたり「コンテンポラリー」という複雑な概念を探求する共同企画展も開催される。3館すべての所蔵品で構成され、各館を巡回する予定だ。さらに、北米や西欧以外の美術史を調査するためMoMAが2009年に立ち上げた部門横断型のリサーチプログラム、C-MAP(Contemporary and Modern Art Perspectives)に、ポンピドゥー・センターとM+のキュレーターが参加することも決まっている。

このほか、3館の館長や部門長、キュレーターで構成される合同運営委員会が発足し、展覧会やコレクションの共有、調査研究、修復・保存、専門人材の育成といった優先課題に取り組む。委員会は毎月会合を開くほか、年に1度は対面での大規模な年次会議を実施する。初回の年次会議は来月MoMAで行われ、以降は各館の持ち回りで開催される。

今回の提携は、M+と他の2館がこれまで個別に築いてきた協力関係を発展させたものでもある。2025年2月、M+とMoMAはコレクションの共有や共同研究、キュレーターの交流を盛り込んだ覚書を締結した。また今年初めには、M+とポンピドゥー・センターが複数年にわたる戦略的パートナーシップを発表し、ポンピドゥー・センターのリニューアルオープン記念展を両館の所蔵品で開催したのち、同展をM+へ巡回させる計画を明らかにしていた。

約1世紀にわたる現代美術の系譜

パリでのインタビューで3人の館長は、今回の提携がこれまでの2館間でのパートナーシップを土台にしていることを認めつつも、3館に共通する理念や歴史的系譜から生まれたものだと強調した。これはジャンルを横断する収集方針や同時代のアートへの注力といった共通点に加え、1929年のMoMA設立から1977年のポンピドゥー・センター開館、そして2021年のM+開館へと続く、約1世紀にわたる現代美術コレクションの系譜を指す。ラフェルも、アジアにM+のような美術館を設立するにあたり、理念の指針として参考にした主要な機関のひとつがポンピドゥー・センターだったと振り返る。

シェリックスは「それぞれの館が、世界にふたつとない独自のコレクションを持っている」としたうえで、「私たちの第一の使命はもちろん作品の保存です。しかし、それらのコレクションをさらに生かし、美術館の壁を越えてより多くの人々に届けるにはどうすればよいかを考えなければなりません」と語る。

収集から共有へ

さらにシェリックスは、今回の提携は巡回展や共同企画展、個別プロジェクトでの協業といった従来のモデルとは一線を画すものだと説明する。チーム同士の連携をこれまで以上に深め、ゼロから共にプログラムを作り上げていく長期的なコミットメントだからだ。

この新たな枠組みには、規模の経済を生かし、作品輸送などの環境負荷を抑えてより持続可能な運営を実現する狙いもある。ラフェルとシェリックスが例として挙げたのが、M+の中国現代美術コレクションのMoMAへの長期貸与だ。これにより、MoMAの展示室で作品を入れ替えながら公開できるだけでなく、米国内の他の美術館への貸し出しも容易になるという。

各美術館がグローバルな視点をコレクションに反映させようとする現在、個別に作品を買い集め続けるよりも、共有するほうが理にかなっている。「ただ収集し続けるわけにはいかないからこそ、私たちは共有を選んだのです」とラフェルは言う。結果として、新規収蔵のハードルはこれまで以上に高くなる。シェリックスの言葉を借りれば、今後共有コレクションに加わる作品は、3館のどこにも類を見ないものでなければならないからだ。

「どれほど同時代のアートに注力しようとしても、美術館の所蔵品はいずれ歴史的なコレクションになっていきます」とシェリックスは続ける。「それをどうリセットするか。今回の提携によって、これまでとは異なる視野と未来を見据えたビジョンを持つことが可能になるはずです」

増える美術館の提携

近年、コレクションの共有やリソースの集約、観客層の拡大を目指して提携を結ぶ美術館は増えている。その手法も、従来の短期的な作品貸借から、共同購入や個人からの共同寄贈、地域ネットワークの構築、長期的な国際交流など、より踏み込んだモデルへと進化してきた。共同購入は、2003年にホイットニー美術館、テート、ポンピドゥー・センターの3館がビル・ヴィオラの映像インスタレーション『Five Angels for the Millennium』を共同収蔵して以来、ますます一般的になっている。

今回の3館のモデルに近い前例としては、2018年に中国系インドネシア人コレクターのブディ・テックが、ロサンゼルス・カウンティ美術館(LACMA)および自身が上海に設立した余徳耀美術館(ユズ・ミュージアム)との間で結んだコレクション共有の枠組みがある(中国政府は余徳耀美術館の公立化を認めず、テックは2022年に死去)。このケースでは新たな財団が設立され、作品を中国に保管しつつ、ロサンゼルスと上海を行き来させて企画展を行う仕組みがとられた。例えば2019年にはLACMAの所蔵品が「In Production: Art and the Studio System」展として余徳耀美術館に巡回し、2021年にはテックのコレクションから20点がLACMAの「Legacies of Exchange」展で公開された。

さらに最近では、特定のコレクターの所蔵品を複数の美術館で共同管理するケースも相次いでいる。2022年には、ギリシャの実業家ディミトリ・ダスカロプーロスのコレクションから約100点が、ソロモン・R・グッゲンハイム美術館とシカゴ現代美術館に共同寄贈された。2024年には、ハマー美術館、LACMA、ロサンゼルス現代美術館(MOCA)の3館が、ジャール&パメラ・モーン夫妻から約350点の共同寄贈を受けている。これら3館は現在も、モーン・アート・コレクティブ(MAC3)と名付けられたこのコレクションの拡充を続けている。(翻訳:編集部)

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